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中国経済の回復を盛んに宣伝する中国共産党

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中国政府商務部は「中国経済のファンダメンタルズは堅調で世界経済の成長に寄与している。」と言ったコメントを外部に向け盛んに発信している。昨年まで中国経済への見通しは悲観論一色とは言わないまでもそれに近い論調が多かった。GDPの伸び率が6.7―6.8―6.9と上向きで,その時々のデータ次第で両極端に触れるのが中国経済の特色でもあった。データの信憑性についてはすでに議論されているが北京政府としては不動産関連の「バブルの容認」やむなしと見ているように思われる。その結果「投資規制の緩和」――「バブルの再来」と言う筋書きを外部のChina watcherなどは想定しているように思える。今年は秋の党大会を控えそれまでは安全運転をと言う特殊な事情もあるが、財政面で見ると通常は年後半に財政支出を増やし赤字とするが今年は早々に赤字を計上し(1~3月期財政赤字)、支出を閉めざるを得ない状況になっている。過剰生産設備の問題、不良債権問題などの繰り返しが中国経済の特色でも有り,これらの問題に直接手を触れないように従来の政府はしてきたが、核心=習近平政権はどのように対処するのであろうか。核心の称号を得たものの毛沢東、トウ小平のような実績は未だ無い。それにしても中国の夢とか一帯一路とか次々と庶民受けする政策をぶち上げるが、汚職退治と同様に一般人民は大喜びするであろうが中国以外ではその効果を疑問視する見方が多い。一例は今月華々しく開催された一帯一路会議だ。北朝鮮によるミサイル発射に妨害されたが、習近平の一人相撲のような会議で参加国の数は多いがロシアのプーチン以外には大物の参加もなく今の習近平の立場を鮮明にした会議とも言える。香港紙(South China Morning Post=以下scmpと略す)ではインドの不参加について今後の最重要課題としてインド/パキスタン問題を解説している。更にインド側は中国に書面でスリランカなどでのインフラ設営に現地政府に過大な金額の負担をさせ、これが汚職の原因にもなっていると明快に問題点を指摘している。
今回は中国経済の下振れリスクをとり挙げてみたい。(8月から中国で統計法が施行され地方政府のかさ上げGDPなどが規制されると期待されているが、しばらく様子を見る必要がある)

#2017年1~3月期
中国の上場企業の業績は資源価格の回復もあり石油、石炭が大幅に改善、政府主導のインフラ投資によって機械も増益という形となった。増益は資源とか採掘の回復と不動産、自動車が主役だが不動産は利益面では昨年12月期から更に大幅に伸びている。北京政府は不動産バブルの押さえ込みに銀行に融資抑制を強制するとともに2軒目の住宅取得制限を実施したが実際には政策効果は限られている。
自動車は小型車減税の縮小から部品メーカ-が好調であったが、資源、不動産、自動車関連が全体の増益額の半分近くを占め外部要因とか政策の影響を受けやすい体質は変わり無い。4月の固定資産投資や個人消費には減速の兆候が現れているので好業績の維持は困難との見方もある。(scmp)

*株式:政府の意向を受けてか、このところ中国株は上海総合指数で3,000pointを維持して政府の政策待ちの様子で膠着状態にある。北京政府そのもののような中信証券が懸命に支えているのかもしれない。政府が雄安新区計画を発表するや関連銘柄が急騰した。一方銀行の違法資金が株式市場から撤退しつつあるともいわれている。そこで中国証券監督・管理機関が株価の急騰・急落を抑えたいとて動き出した。

*様子見が広がる自由貿易区
上記の雄安新区計画は自由貿易区の一つだが1980年代には広東省にできた経済特区に続き新たに改革開放を主導する地区が生まれるとの観測もあり海外企業も国内企業も自由貿易区に殺到した。
中国政府は自由貿易試験区を従来の上海など4ヶ所から7ヶ所に拡大し海外からの投資を狙ったが,外資が全く動かないと言う状況だ。
秋の共産党大会まで余計な動きをしない方が良いと言う高級官僚の一種のサボタージュもあるが政府が何時条件・方針を変更するかも分からないと言う事と、新たな魅力を生み出せない官僚の無策にもある。新たな自貿区に進出する日本企業は今のところ皆無だ。中国企業は地方政府への付き合いで2/30社が投資すると見られている。

#中国経済が迎えた下振れリスク
*無責任なラガルド発言 2016年9月(scmpによる)
人民元のSDR採用でIMFラガルド専務理事は画期的な事と人民元を持ち上げていたが,中国でIMF,世銀、WTOなど国際機関トップとの会談で「中国のGDP成長は6.5%から6.6%に0.1%改善するであろう。と述べ更に李首相などとの会談後中国経済は改善しつつあり、改革は軌道に乗っていると女史特有の中国経済に対する楽観論を記者の前で語った。一方、IMFの期待に反し人民元は後述の通り管理通貨に逆戻りとなってしまった。

*国富ファンドCICの赤字決算
CICは当時豊富にあった外貨準備から資本金3,000億ドルを捻出し、海外企業の株式などに投資して配当を得てきた。昨年の時点で8,138億ドルのファンドに成長したと言われていた。ところが原油、鉱物資源の下落と為替によって損失が出るようになり,更に北米、欧州での多額の不動産投資のため更なる損失も予想されるようになった。

*中央銀行(中国人民銀行)も簡単に路線転換ができない
設備投資など企業の投資マインドが減速しており,これ以上の通貨供給を続けるより減税による景気刺激策のほうが効果的だなどと路線転換をうかがわせるような発言が相次いでいるが人民銀行も現状では手の出しようが無いのが実態だと思う。
すでに過剰在庫はダンピング輸出となり、余った労働者を一帯一路projectで海外に押し出そうとしている。一方国内では株式と不動産相場を安定させるべく所謂ヘリコプターマネーをまき散らしてきた。

*中国のギリシャ、ピレウス港買収も暗礁に乗り上げか
ピレウス港は一帯一路projectの欧州の玄関口だ。ギリシャは債務返済のため国家財産の割譲をしているがピレウス港の貨物取扱量は全欧州でも8位と大きく、年間336万TEUを扱っている。すでに埠頭の一つは中国企業が買収し管理している。COSCO(中国海運)が管理運営会社の株式の大半を取得しているが、ギリシャのチプラス支持団体からも反対論が出てきた。ギリシャ以外でも海外projectの中断、挫折が起こり中国政府内でも問題となっている。

#ムーデイ―ズ中国国債格付けを引き下げ
アメリカの格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが中国の長期国債格付けを引き下げた。1.GDP成長率の低下は今後5年間で5%台になる2.中国政府部門の債務負担の増大に対する懸念3.政府・企業部門の債務比率の上昇などが背景にあるようだが共産党政権が進めている強引な成長維持が財政に負担をかけ信用力を揺るがしかねないとみているようだ。中国財務省は早速これに反論した(政府機関が格付会社に直接反論するのも中国らしい)。金融市場への影響はそれほど大きくはないが習近平政権が大々的に掲げる人民元の国際化はまたまた遠のいたと見るべきであろう。香港と中国本土で債権の相互取引を始めると北京政府は言っていたが人民元の国際化と海外への資金流出を防ぐ事を目論んでいたのだろうが格下げにより中国への投資額は大幅に減少するとの見方もある。
一昨年夏以降、資金流出と元安の悪循環で中国人民銀行も手の打ちようがなかったが,ここに来て管理通貨への逆戻りを宣言した。昨年後半から資本規制を強化し外貨準備の減少や元安にはある程度歯止めがかかったが5月後半には元売りの動きが出てきたので管理通貨への復帰を鮮明にしたのだろう。何れにしても元の国際化は益々遠のいた。

#経済産業省が火元のAIIB,一帯一路への日本の参画
AIIB,一帯一路など中国主導の国際戦略に日本も参加して内部から改革すべきだとする論調が最近は多い。従来はあまり国際情勢に詳しくない人々や中国の宣伝攻勢にのっていつの間にか中国側の代弁をしていた人がこの種の議論を展開していたが(ある著名な評論家は人民中国の取材に応じ一帯一路で中日経済協力の再構築なる論文を出したが日中が中日となり完全に中国側の立場を代表している。)最近は経済産業省などが盛んにこれを唱えている。もちろん普通の国ならこの議論も通じるが、中国の場合、内部からの改革などありえない。経産省の官僚は1980年代のJapan Bashingを忘れたのだろうか、それとも当時は外務省からの出向者を中心に繊維交渉などをしていたので印象が伝わっていないのかもしれない。当時の通産省はNotorious MITIと言われ米国担当官にさんざんにやられたが根本的には外交に無知な連中が表舞台に立ったことにある。現在の米・中関係を見るとトランプ政権は北朝鮮問題解決のため中国に圧力をかけ,そのため大統領選挙期間中から言っていた中国に対する経済面での圧力を暫時停止しているとの論評がマスコミなどで流されているが,実際にはこの間に中国外交は次々と手を打っている。対北朝鮮では石炭の輸入を停止したが、中国としては品質的に必要なので実際には韓国などの陸路経由または海上輸送で中国に密輸入されている。一方石油などの北朝鮮向けの禁輸はマスコミなどで騒ぐだけで何も実行されていない。貿易不均衡是正のため「100日計画」をだし、早速米国産牛肉の輸入再開と言った話題性のある問題を前面に出し、ボーイング航空機の輸入とか従来からの大量買い付けを前面に出し得点稼ぎをしている。但しトランプ政権も軍事面では経験豊かな人材を起用しているので南シナ海問題(丁度1年となったが)では正面からこれを非難する姿勢を前面に打ち出したので習近平政権もどのように対抗するのか注目したい。それにしても中国の場合は外務大臣(現在の王大臣は元駐日大使で当時の日本を楽しんでいた)の地位は共産党内ではそれほど上位ではないが南シナ海問題を始め習近平になんとか認めてもらおうと国際司法裁判所の判決を紙くずと言ったり、特に日本たたきが激しい。更に激しいのが外務部女性報道官だ。一帯一路に対する日本側の最近のapproachを歓迎すると同時に条件付きに対し同時に不快感を示している。少なくとも国際法を学んでいる日本人には到底言えない事を公言し、今や中国外交にトランプ政権も翻弄されている。最終的には中国側の腹は経済面では何かあれば日本を巻き込んで解決しようとの考えのようだ。

#汚職の嫌疑で米国に亡命中の実業家 郭文貴の証言など
習近平は政治局常務委員に嘗ての部下であり自らに忠実な部下を次々と起用している。これだけを見ると習政権は秋の党大会を待たずに権力基盤が確立したともとれるが高度成長時代は良いが幹部の腐敗が深刻で、「反腐敗運動」の先行きと共に未だ権力闘争は続いているとみるべきではなかろうか。米国で最近反習近平派と見られる郭氏はVOA(Voice of America:米国の国営放送)で習の片腕とも見られている王岐山の親族の腐敗ぶりを証言し出した。この証言に期待していたがVOAは突如放送を打ち切った。おそらく中国側のロビイストの強力な巻き返しがあったのだろう。また、NYの最も有名なウオルドルフ・アストリアホテルを19億5千万ドルで買収した中国安邦保険集団(董事長はトウ小平の孫娘と結婚、その後離婚)は中国の富裕層を米国への不動産投資に勧誘を始めた(米国では50万ドル投資すれば移民が認められる)この動きを注意深く見守りたいと思ったが、突然、董事長が当局に拘束されたという。権力闘争は未だ続くとみるべきかもしれない。

#トランプ政権地球温暖化対策のパリ協定離脱
論点は中国などはただ乗り、米国は一方的に支払いをさせられている点だが、日本のマスコミは米民主党の宣伝に乗った論調を展開しているがこれもオバマのレガシー作りの失敗の一つでキッシンジャー、スーザンライスとオバマ政権の対中工作の失敗を中国側は早速外交攻勢に利用している。

#更に増大するか地方政府・国営企業の不良債権
地方政府は財源不足に悩んでいた。そこで傘下の投資会社(一般には地方融資平台)からいろいろな手段で表に見えない借金が巨額となっていた。北京政府はこれにも縛りをかけたので、地方政府は
public private partnership(PPP)に一斉に乗り出した。PPPは官民パートナーシップといわれるが民間の資金を利用して交通運輸(地下鉄など)などのインフラ投資が主力だがすでに乱立により不良資産増大が懸念されている。一方官民と言っても実態は国営企業中心で国営企業が地方政府の財源のつけ回しに加担しているとみるべきであろう。何れにしても地方政府、国営企業の過剰債務の解決は益々遠のきつつある。秋の党大会以降の中国経済を注意深く見守りたい。

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