ネットの根源
【事例1】
最近のクルマの修理工場は、以前とはかなり変わってきたと言います。
修理の現場で意外と多く見られるのがソフトウェア関連。
このチェックのためにテスターをつなぎ、どこがおかしいかを診断します。
そしてよく出てくる診断結果が「ソフトウェアをアップデートせよ」というもの。
この指示が出てくると、クルマを通信でつなぎます。
そうすると新しく改定されたソフトウェアが本社(外車の場合は本国)からネットで送られてきてクルマにインストールされます。
修理はこれで終わります。
【事例2】
Aさんがクルマを運転していると後方からかなりのスピードで近づいてくるクルマがありました。
Aさんのクルマは危ないと認識し、自動でブレーキが少しかかり、ブレーキランプを点灯させることで後続車に警告しました。
私が運転しているクルマはここまで賢くありませんが、日本の路上ではAさんのクルマのような賢いクルマがどんどん増えています。
* * *
このように、あらゆるものにマイクロプロセッサーが組み込まれ、そして、あらゆるものがインターネットにつながる「IOTの世界」が現在急速に進展しています。
そうした中でのソフトバンクによるアームの買収。
これはもう見事と言うしかありません。
(アームの株価推移~過去10年)
この買収により、ソフトバンクは、ネットの根源とも言うべきコアの部分を押さえることが出来たわけで、今後の成長が大いに期待できます。
かつてアップルがiPhoneを発表した時、ソフトバンクの孫さんはスティーブ・ジョブズのところに駆けつけ、「ぜひともこれをソフトバンクで扱わせて欲しい」と懇願しました。
ジョブズは、ドコモなどの既存勢力にチャレンジャーとして挑むソフトバンクに共鳴したこともあり、どこよりも先にソフトバンクでiPhoneが取り扱われることを認めました。
これによりソフトバンクの業績はぐんと伸びて今日の地位を築きました。
これから先、3年後、5年後はどうなっているのでしょう。
アップルやサムスンにとっては、川上はアームに抑えられています(アームはスマホに搭載される通信用半導体の回路設計シェア9割超)。
そして川下には米国のスプリントであり、日本のソフトバンクであり、いずれにせよソフトバンクグループが存在します。
川上も川下もどちらもソフトバンクグループに抑えられてしまったわけで(もちろん川下には競合他社がたくさんいるので抑えられたわけではないですが)、その昔にジョブズと孫さんとの間で交わされたやり取りは、ひょっとすると、これから先、数年後には、立場が逆転しているかもしれません。
それにこの買収をするにあたってソフトバンクが手放したのは:
【1】アリババ株、1兆0900億円、これによりソフトバンクのアリババ持株比率は32.2%から約27%へ。
【2】ガンホー株、730億円、これによりソフトバンクのガンホー持株比率は28.41%から4.94%へ。
【3】スーパーセル株、7700億円、これによりソフトバンクのスーパーセル持株比率は72.2%から0%へ
【2】と【3】はゲームの株です。ゲームはこれから先1年くらいはポケモンGOに客を奪われそうですから、売却のタイミングとしては良かったものと思われます。
そして英国の国民投票でEU離脱が決まったこともあって、ポンドもぐんと安くなっていた・・(よって買収価額が高いと一部で批判されていますが、円ベースにするとそれほどでもない)。
いろんな意味で見事と思わせる買収劇でした。