中国の過剰債務問題
中国はリーマンショックに際し4兆元(62兆円)もの景気刺激策を断行し、世界経済の底割れを防ぎました。
しかしそれが過剰資本ストック、過剰債務となって、その後の中国経済をじわじわと苦しめるようになってきました。
いったいどの程度の過剰債務なのでしょうか。
本日の朝日新聞に中国の政府系有力シンクタンクの試算が報じられていました。
以下、記事の一部のみ引用します(全文については『こちら』をどうぞ。あるいは新聞の第4面をご覧ください)。
『中国全体の負債額が国内総生産(GDP)の2.5倍にのぼるとの試算を、中国の政府系有力シンクタンクが発表した。
国際通貨基金(IMF)も「切迫している」と警戒を強める借金問題に、中国政府が抜本的な対策を示せるかが注目を集めている。
借金の総額は2015年末時点で168兆元(約2650兆円)。
GDPの249%に達し、うち企業分が156%を占める――。
中国社会科学院国家金融・発展実験室の李揚理事長は先月、こうした試算を公表し、
「企業の債務に問題が生じれば、銀行にも波及する」
と警鐘を鳴らした。
IMFの見方は
「今日の借金問題は明日のシステム不安になりうる」(リプトン筆頭副専務理事)
とさらに厳しい。
効率の悪い国有企業が借金を重ねる構造が温存されれば問題は深刻化するとして、先月、中国政府に速やかな対策を促した』
ポイントはGDPの249%のレベルがはたしてどういった水準であるか、他国と比べてどうかという点です。
日本は政府債務の残高だけでGDPの232%に達します(『こちら』)。
ですから、全体の債務がGDPの249%と言っても、日本の感覚からすれば大したことはありません(その日本の『感覚』が実は問題なのですが、ここでは日本のことに深入りせず、中国に絞ってみていきます)。
さて中国のこの『全体の借金』には、政府部門、家計部門、非金融民間企業部門が含まれ、金融機関の債務は含まれないものと思われます。
そして、ここで特に問題なのは上記記事で企業部門156%とあるように、企業部門の負債がGDPの156%にも達することです。
これは、日本の企業部門の債務残高の対GDP比率の過去最高値(94年末、149.2%)を上回る水準。
日本では当時ゾンビ企業の存在が銀行を苦しめ、97-98年の金融危機(97年の北海道拓殖銀行破綻、98年の日本長期信用銀行と日本債券信用銀行の破綻)に結びついていきました。
こういった事態に陥らないためにも、中国が過剰債務問題に抜本的に取り組むことを期待したいものです。
世界は連鎖しているので中国の問題は日本を含む他国に波及してしまうからです。