Home»オピニオン»1月原稿

1月原稿

1
Shares
Pinterest Google+

既に本稿でも触れているが中国の場合1990年以降政治は社会主義、経済は市場経済という政策をとっている。その社会主義を代表する街が北京で、市場経済を代表する街が深センと考えてもよい。北京の冬は極めて寒いので20年前は各家で豆炭、練炭を炊き町中にその匂いが充満していた。その後集団暖房を稼働させるため火力発電所で石炭を燃やしていた。ところが最近になって環境問題に共産党も取り組みはじめ、石炭の使用を禁止し天然ガスかもしくは電気による稼働に改められた。北京周辺の工場の稼働を半分に制限し、ガソリン車の走行を制限し、さらに共産党政権でないとできないと思われる禁止令がでた。去年の9月から今年の3月まで北京市内での工事を一切禁止したことだ。ビルやマンション工事はもとより家庭での内装工事も含まれている。その結果、太陽の光が全くなかった街に突然青空が出現したり、街で空気をすっても今までのようにいやな豆炭、練炭のにおいがなくなったりと(大気汚染の指標の一つであるPM2.5の一般濃度が1000近く、息もできないくらい苦しかったが突然改善された)市民には大好評だ。

一方、深センの街を見て感じることは物ごとの進んでゆくspeed感だ。社会主義体制の良い部分でもある。深センの人口は約1100万人で外から通う人も含めて2500万人が働いている。その労働者用交通機関としてバスがある、これがすべて電気自動車になるという。更にタクシー1万6千台もすべて電気自動車に改めると宣言され既に1万台が電気自動車に変わったと言われている。

一帯一路のダークサイドについても前稿で触れたが、中国の経済援助でスリランカの南部に無駄な大港湾設備の建設が進められた。そればかりでなくマラッカ海峡、ミヤンマーからバルチスタンに至るまで中国の覇権主義と、拡張主義の象徴として大港湾の建設が問題となっている。借金返済に窮したスリランカは中国の融資で建設した巨大港湾運営会社の株式の70%を99年間中国に貸与した。インド洋の海上交通の要所であるだけに世界の懸念材料となっている。スリランカは中国の一帯一路の植民地となり、港の軍事化(中国は訓練用キャンプだと説明するが)が進んでいる。巨大軍事基地を建設し次にインド洋支配に着目したわけだ。アフガニスタンの細長い回廊が中国の新疆ウイグル自治区へとつながっている。通偁アフガン回廊とよばれている。この回廊の中国に近い地域に中国人民解放軍は訓練キャンプを設営し一個大隊を派遣するという。ここはジプチに次いで2番目の海外基地となる。中国は訓練キャンプだと言い逃れている。新疆ウイグル自治区と中国は勝手に国名をつけたが東トルキスタンが正式国名で今年の上海協力会議にアフガニスタンは正式メンバーとなって習近平のシルクロード構想に加わった。これが伏線であった。アフガニスタン政府はアフガン回廊に中国軍の訓練基地を認めた。中国の狙いは表向きテロリスト対策だが真の狙いはアフガン内の豊かな鉱物資源鉱区であろう。中国の一帯一路のダークサイドだ。さて話を 深センに戻すと中国人の価値観は中華思想に代表されるが、これは大国、強国志向で一般論としてはルールなんて守ったら損、バレなきゃよい、勝てば官軍、非を認めたら負けという図式だ。その結果、法治国家とは到底思えないコネ社会がすべてを動かしている。このコネ社会はすべてカネで動いているが中国全般に広がりすべての法令、規則はコネ社会によって動かされている。
話は飛ぶが、最近のNY株式市場、および世界の株式市場は大手金融機関(Goldman Sacksなど)によって動かされている。株屋としては株式が動けば動くほど利益が出る仕組みになっており、金余りの時代に何とか株式が動くように大手金融機関が次々と話題を提供している。Huaweiの女CFOとか、実際に景気の悪化が話題になりそうな人物も登場するが、米中貿易摩擦で景気の悪化を招くなどかなり荒唐無稽な説も出ている。これに対し大手金融機関はすべて問題ありとの態度をとり。さらにメディアまでトランプ大統領の問題点をたたく民主党寄りの新聞並みに貿易摩擦をたたいている。これにより株式市場は乱高下を繰り返し大手金融機関は当然利益をうんでいる。また、米中の経済会議についてもいろいろ論評しているが
中国側には対抗すべきカードが乏しいので株屋が期待するほどの議論には至らないであろう。

従来筆者もオバマ・キッシンジャーなど中国が経済発展するにつれ西側と同じ方向に向かうとの誤解が逆に中国経済の発展に寄与してきたと解説してきたが、最近になって中国に対する日本の政府開発援助(ODA)がようやく終わったと報道された。中国に対する経済援助はODAだけではない。輸出入銀行などから3兆円を超える公的資金も提供されている。円借款は2007年に終了したことになっているがその前の契約残(円借款)は2017年9月まで続いていた。

中国の官製メディアは日本からの経済援助について一切報道していない。チベットの大山岳地帯を貫通するラサ鉄道も日本の経済援助で完成したものだがいまでは人民解放軍が完成した鉄道として喧伝されている。同じく日本の援助で建設された福建省の鉄道は台湾の総統が中止を要請したが日本側は聞く耳を持たなかったともいわれている。対中国ODAは79年に始まり90年代に巨額になってゆく。反日官製デモなどもありODAの増額と日中友好は何の関係もないどころか中国の軍事力拡大に間接的に貢献したともいえる。実際に
90年代中国各地を回ると各地でODAがらみの鉄道、道路などに遭遇した。人民日報などは日本の誰それが貢物を持ってきたといった記事を掲載していた。考えてみればオバマ・キッシンジャーよりも日本のいわゆるChina Schoolの連中のほうが中国の経済発展につれ西欧化するとみていたのかもしれない。貢物外交などはその好例で今日の経済・軍事強国化は日本のChina Schoolの貢献によるものかもしれない。(外務省、大手商社などには中国語を学んだ専門家がいるがここでは外務省の中国専門家を指す)

Previous post

次代の‘グローバリゼーション’に向けて

Next post

日本国の若者の発明創造能力を育成する理由