<ソ連・東欧見聞録> 滄海桑田
住友銀行専務取締役 岡部陽二
「平沢ミッション」に参加させていただけた私の幸運は次の三点に要約できます。
まず、第一にそのタイミングがベストであったこと。ベルリンの壁が崩壊してちょうど一年、統合総仕上げ直前のドイツを目のあたりにみることができました。まさに滄海桑田の東欧各国でも民主国家としての新体制で走りだした直後で、新しい国づくりの熱気にあふれたエキサイティングな人々と語り合えたのは本当に実りの多い体験でした。
次に、が市場経済へ向かって離陸するにあたってのアキレス腱は、連邦と15共和国間の主権争いと民族自決問題であることが、実感としてよく分かったこと。確かに、ソ連の人々はすでに疲れて秩序を求めてはいるものの、この大間題をゴルバチョフ大統領が裁ききれるかどうか、これからのソ連を見るポイントがしかと掴めました。
最後に、空前の大型ミッションで、さすがに多士済々の皆さま方に親しくしていただけたのは、海外駐在の長い私にとってまことに得難い収穫となりました。
(1991年1月7日、金融財政事情研究会発行「金融財政事情」1991年1月号、<エッセー>「ソ連・東欧見聞録」p93所収)