アベノミクス、660日の軌跡
― 目次 ―
はじめに:正念場?の「アベノミクス」
1.アベノミクス始動
2.右旋回をはじめた安倍政治
3.新成長戦略と、「アベノミクス第2章起動宣言」
4.日本の‘国のかたち’が変わった
5.安倍晋三政権の罠
おわりに:富国裕民 (付)[ 資料 1 /2 ]
はじめに :正念場?の「アベノミクス」
10月31日、日銀は追加の金融緩和に踏み切りました。その内容は、金融政策の目標としている資金供給量(マネタリーベース)を、年10兆円~20兆円増やし、年80兆円に拡大すると言うもので、日銀が追加緩和をするのは、黒田総裁就任直後の昨年4月以来のことです。日銀は2015年度にかけ物価上昇を2%に高める目標を掲げていますが、近時、足元の物価上昇が鈍化していることを受けて、デフレマインドからの転換を促すべく追加緩和を決定したと言うものです。この直後、円安は進み、株式市場は大いに囃したことなど、云うまでもありません。また、同じタイミングで、成長戦略の一つとされている年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の公的年金の‘運用構成’を、国内債は35%に下げ、国内株式を25%に引き上げると、アナウンスされたのですが、これも株式市場の活性化を狙ったもので‘株価’と歩む、安倍政権、躍如と言う処です。
しかし、追加緩和に向かった事情などからは、単にアベノミクスの底上げと、映る処、その行き着くところが極めて気がかりと言うものです。と言うよりも、その運営のあり姿からは、「アベノミクス」はいま正念場を迎え出しているのではと、思えてなりません。
そのアベノミクスは、2015年1月4日で、3年目を迎えます。これまでも、当該動向については‘月例論考’等、都度報告してきていますが、この機会に、それら資料をベースに、「アベノミクス、660日の軌跡」と題し、改めて「アベノミクス」の来し方を、一からレビューし、そこに見る問題、課題、求められるべき成長戦略等、今後の日本の在り様も踏まえ、考察してみたいと思う次第です。
1.アベノミクス始動
2012年12月の総選挙の結果、自民党が大勝。3年半ぶりの政権奪還で、再び首相の座に就いた安倍首相は、翌、2013年1月4日、長きに亘り続く日本経済のデフレからの脱却、そして持続可能な経済の再生を目指す経済政策を打ち出しました。「アベノミクス」です。その名は、今や世界に冠たる経済用語となっていること、周知の処です。その政策の枠組みは、3本の矢、つまり第1の矢とする‘異次元の金融緩和’、第2の矢とする‘従来にない大幅な財政出動’、更に第3の矢とする‘構造改革を狙った成長戦略’、という3種の政策手段を擁するもので、その基本は金融財政を駆使してデフレからの脱出を図るいわゆるリフレ政策です。
第一の矢とされた金融政策については、安倍首相はまず人事面から手を付けます。つまり、任期の来た白川日銀総裁に代え、予て長期停滞の日本経済を復活させるには大幅な金融緩和が必要、と主張していた当時アジア開銀総裁にあった黒田東彦氏を3月に総裁に迎えたのです。
さて、その日銀(黒田総裁)は、4月4日、物価上昇率2%を目標として、その達成に向け異次元と言われる大胆な量的金融緩和、具体的には「マネタリー・ベースで資金供給量を14年末前年比約2倍の270兆円に拡大させる」とする金融政策を実施したのです。この結果、これまで日本経済の足かせともなっていた円高は、その是正が進み、株式市場は活性化し、企業収益の改善も進むなか、個人消費も回復をみるまでになったのです。
そして、第二の矢として、政府は機動的財政出動として大幅補正予算(13兆円規模の補正追加予算)を成立させる一方、大規模と言われた2014年度の予算案(一般会計総額、95兆8823億円)の年度内の成立を図ったのです。この経済再生とデフレ脱却を目指す安倍政権の予算は、新年度当初から始動できる環境も整ったと云うものでした。
こうした金融、財政の二つの政策実施をうけ、円高の是正、株式市場の活性化、公共投資の回復、需要の回復で、日本経済の景色は一変する処となり、夏場にかけて漸く、デフレからの脱却への道筋が見えてきたと、一気に経済の雰囲気は明るさを取り戻すところとなり、海外からも、大きな賛辞を以って迎えられたと言うものです。因みに、今年1月、スイスで開催のダボス会議には、安倍晋三氏は日本の首相として初めて招待され、基調演説を行っていますが、そこでは20年来のデフレ停滞を託っていた日本経済を覚醒させた政治家として紹介され、まさに‘スター’となったのです。(注)
(注)英紙Financial Times(Jan,25/26,2014)では、`Abe and Rouhani emerge as star attractions’ と、安倍首相と同席のイラン、ロハニ大統領の二人をスター登場と紹介。
その直後の円相場は94円77銭まで円安に、又これを受けた日経平均株価の終値は1万1662円52銭と2008年9月29日(1万1743円)以来の最高値となっており、2013年に入ってからの日本株の上昇率(12.2%)は世界で突出したものとなったのです。そして2月12日発表された消費者態度指数は43.1と前月から4.1ポイントも改善を示しており、消費者のデフレ心理も和らいでいったというものでした。これまでの「円高とデフレ」は一体で進んできた面が強かっただけに、この変化が意味する処は極めて大きく、つまりは、これまでの円高・超低金利の長期トレンドが反転を迎えたと言うものでした。いずれにしろ敵失で再登板した安倍晋三政権は、その成立直後の国民支持は40%であったものの、いまや70%に迫る支持率となったのです。まさにリフレ政策の賜物という処です。
序でながら、異次元の金融緩和、そして、その結果としての円安の進行で景気回復を進める日本の姿は、1985年9月22日、NYのプラザ・ホテルで4か国(日英独仏)の財務相があつまり、米ベーカー財務長官との間で、ドル高是正のための合意をみた、いわゆる「プラザ合意」を想起させる処でした。
従って、2013年と言う年は、アベノミクスで始まり、アベノミクスで終わるものと思われていました。しかし事態は後述するように、2013年7月の参院選での自民党圧勝を境に、安倍晋三首相の政権運営の姿勢は、言葉とは裏腹に経済から政治に、つまり‘右’よりにシフトを始め、12月26日の靖国参拝は、その極みと映るものでした。靖国ショックです。そして今年、2014年は、その影響を引きずった一年となったというもので、安倍政権には、その信が問われ続けられることとなったのです。
・日銀の役割
尚、ここで注目すべきは中央銀行、日銀の役割の変化でした。これまで、日銀は通貨の番人として、政府の経済政策とは常に一線を画す形で、政策展開を図ってきたのですが、今回、アベノミクスの金融財政政策の円滑な推進を図る趣旨から、安倍政府は日銀とのアコード、つまり政府の経済政策を理解し、日銀がそれに応える形で、金融政策を進めていく事を合意した事でした。
つまり、チーム・アベノミクスが編成されたということで、云うまでもなく監督は安倍首相、ヘッド・コーチは安倍首相に請われて就任した日銀の黒田総裁。そのヘッド・コーチの役割は、監督の趣旨を体して、第一の矢「大胆な金融政策」を実現し、第二の矢の「機動的な財政政策」(勿論これは日銀の担当領域ではありませんが)の原資のお膳立てをすること、つまり日銀による国債引き受けのスキームを作り上げたことで、ほぼその任務は達成できたという事になるのでした。従って、あとのインフレ・ターゲットは円安傾向が持続する限り達成は十分可能と見られると言うものでした。
・‘成長の天井’
が、その実状は、株価が上昇しただけで、期待されていた実体経済の活性化は一向に見えてこない、つまり、景気の好循環が企業の設備投資に繋がる、本格回復には至らぬままに推移していったというものでした。言うなれば‘成長の天井’を突破しないと次に進めないという状況がそこにあり、その天井こそが、いま日本経済が抱える構造問題とされる処ですが、それに向かっての対応が出来ていなかったという事です。その構造問題を映す指標が、一つは‘国際収支黒字の減少(赤字化傾向)’であり、もう一つは‘企業の設備投資の伸び悩み’なのです。とりわけ、前者については、財政赤字は国債で穴埋め推移してきていますが、この国債消化にはこれまで好調な輸出(貿易黒字)が齎してきた経常黒字が充てられてきた関係からみて、日本経済の運営という、より基本的な問題とされる処です。
又、後者については、特にリーマン以降、多くの企業は、経営の合理化、資金の効率追求等に走り、極めてリスクコンシャスとなり、新規投資は抑制的で、その結果は不稼働資金といわれる内部留保となって企業内に留まるばかりで、成長の誘導要因とされる設備投資は起こらず、経営は内向となってきたという事情です。この間、経済のグローバル化が進み、そうした環境にあって企業は、コストと市場の可能性を考えた限界的な海外進出を進めてきた結果、国内的にはいわゆる空洞化が進み、近時円安にもかかわらず、日本からの輸出は伸び悩み、輸出需要を見込んだこれまでの設備投資も鈍化してきたと言う事です。
元より、それら問題は、リーマン・ショック以降の不況の中で覆い隠されてきたと言うものでしたが、今回の第1の矢、第2の矢による回復基調が進む中で、それらが鮮明と浮き彫りされてきたというものです。そこで、その解決に向けた次の一手が求められる処で、それこそが、第3の矢とされる「成長戦略」で、しかも、それは、そうした構造改革に繋がるものであることが求められる、ということでした。
・第3の矢:成長戦略
さて、2013年6月13日、そのアベノミクス第3の矢とされる成長戦略は、「日本再興戦略」として閣議決定されました。そのシナリオは、「日本産業を強くすべく新陳代謝を進め、次に新たな成長分野を切り開き、そしてグローバル経済で勝ち、今後年3%の成長を目指す」とするものでした。(後出 資料[1] 参照)
然し、その直後のリアルたる‘市場’の反応は、ネガティブなもので、海外メデイアも、期待されていた労働市場や医療、農業、企業関連の広範な規制緩和と言った主要項目がほとんど盛り込まれず、力強さに欠けるものと、手厳しく批判するのでした。実際、安倍晋三首相自身、成長のカギは規制改革にありと、「規制改革こそが一丁目、一番地」と叫び、これこそが政治の出番としながらも、その直後の参院選を控え、関係業界や利益団体を刺激するような改革提案を躊躇していたこと、更には後述の通り、12月安倍晋三首相は日本の軍国主義賛美の象徴とされる靖国参拝を行ったことで、これが他国を激怒させる一方で、首相が経済改革の本筋から逃れているのではないか、との疑念が強まる等で、結果として具体的成果を見る事なく推移したということでした。
改めて、現下の景気回復が金融緩和による円安効果に支えられたものである限り、リアルの実弾の欠ける経済状況では、回復歩調も限界が見えてくると言う処、つまりは、デフレを確実に克服し、経済の再生を図り持続可能なものにしていく為には、経済の主役である企業を活力あるものとしていく事が不可欠であり、民間投資も回復していく必要があるという事を再認識させられたというものです。
こうした経済政策を巡る環境にあって、安倍政権の政策運営に大きな変化を齎す契機が訪れたのです。それは、その翌月に行われた参院選の結果でした。
2.右旋回をはじめた安倍政治
(1)2013年7月、参院選、自民圧勝
2013年7月21日行われた参院選では、自民党が圧勝、2012年12月の衆院選での結果と併せ、これまで続いた捩じれ国会の状況は解消され、安倍晋三氏としては政権運営に極めて自信を持つ処となったのです。(注)
(注)国会、政党勢力構成 (2014年10月14日現在)
[ 政権与党 ] [ 野党 ]
・衆院: 326(内、自民:295) 154(内、民主:56)
・参院: 135(内、自民:115) 107(内、民主:59)
つまり、前年の衆院選での自民党の大勝は、前政権の民主党がその無力さにNOを突きつけられた結果であり、云うならば敵失に負うセカンド・ベストの勝利であったのに対し、参院選での勝利は、安倍政権が掲げた経済政策、アベノミクスへの支持に負うものであったのです。この結果、安倍晋三首相には政権の安定運営が可能となったのですが、同時に、参院選で見た国民の政治感性を安倍晋三氏は十分に理解しておく必要があったのです。
が、この新たな政治環境を手にした安倍晋三首相は、その政治姿勢を急速に安全保障問題に向けていく処となったのです。これは、7年前の第1次安倍内閣での念願とした政策姿勢だったという事ですが、とすれば、それは、今、再び、と言う事で、気になる処です。
因みに、その後の安倍首相とその周辺では、特定秘密保護法、国家安全保障会議設置、国家安全保障戦略(NSS)、更には新防衛大綱、中期防衛力整備計画、そして集団的自衛権の行使容認、等、安全保障政策に向けた言葉が、安倍晋三首相が唱える「積極的平和主義」のキーワードの下、満ち溢れ、いつしか政権の右傾化を実感させられると同時に、国民が期待しているアベノミクスへの関心の希薄化を、感じさせられる処となったのです。もとより、それは民意を介すことのない政治姿勢と映る処です。
序でながら、確かに、日本を取り巻く安全保障環境は昨今、厳しいものがあります。中国は海洋で国際秩序への挑戦を続けています。米国の影響力は低下し、尖閣を巡る確執や北朝鮮の核ミサイル問題への対処にも不安は残る処です。そこで、日本が軍事的な役割を拡大し、地域のパワーバランスを図るのが安倍政権の考え方なのでしょう。しかし、軍事偏重の動きは、近隣諸国への敵対的メッセージにもなる処で、これが結果として、「安全保障のジレンマ」に陥ることにでもなれば、かえって地域の安定を損なうことにもなりかねません。そもそも中国の軍拡を抑制するには、国際世論を日本に引きつける外交力が必要になる処です。勿論、歴史認識や領土問題の取り扱いが肝心ですが、安全保障戦略からは解決への道筋は見えないことだけは銘記されるべきと思料するのです。
(2)安倍晋三首相の靖国参拝と、米TIME誌の特集
・靖国参拝
さて、こうしたコンテクストにあって安倍首相は、2013年12月26日‘靖国参拝’を行ったのです。云うまでもなく安倍首相の靖国参拝と言う行為は、内外からの日本批判を惹起する処、とりわけ中国、韓国よりは、右傾化を強める日本国の首相として「安倍晋三」への批判を更に強固なものとしていったのです。そうした中で、2013年は終わり、翌2014年は、その「靖国ショック」を引き継いでいく事となったのです。
中国、韓国からの批判は予想された処と言うものでしょうが、米国政府筋からも`disappointed’ とのコメントが伝えられるや、同盟国の米国に背を向けられたと、日本のメディアは伝えましたが、続く米国務省東アジア・太平洋担当次官補のDaniel Russel氏が発した安倍首相の靖国参拝についてのコメント「アジア地域に関する首相の見解と意向に疑問を抱かせ日本の外交面での影響力を損なうものだ」を耳にするに、なにかギクッとするものを感じさせられたというものでした。― いま、何故 靖国? というものですが。
そして、今回の‘靖国ショック’は、中国の台頭を背景に、世界のジオポリテイカル(地政学的)な構図が、米欧中心からアジアへと移行する中での事件であるだけに、アベノミクスの今後の生業も含め、つまり「アジアの成長力を取り込む」ことをアベノミクスの戦略の一つとされている処ですが、これからの‘世界の中の日本’をマネージしていく上で、そのカジ取りは極めてタフなものとなっていく事が想定されると、示唆するのでした。
・米TIME 誌の安倍晋三特集
最早、安倍晋三氏は Nationalist, 国家主義者として危険な存在と評されるほどになっているのですが、2014年4月28日付、米誌TIMEが伝える安倍晋三特集‘The Patriot’は、極めて印象深いものでした。それは表紙一面に、安倍首相の顔写真を飾り‘強力な日本を夢見る安倍晋三’と題する特集でした。が同時に、その表紙には、なぜかそれが多くの人々を‘uncomfortable’(不安な思い)にさせている、と付言するものでした。
そのタイム誌の趣旨は、安倍晋三氏は、アベノミクスと呼ばれる経済政策を以って、これまで停滞してきた日本経済を再生させる道筋を作り、経済を元気にさせた、久し振りに世界的な注目を呼ぶ日本の首相、と評価するものでした。が、それにも拘わらず、昨年(2013年)12月の靖国参拝問題、直近の集団的自衛権行使容認問題、等々、こうした右傾化を映す彼の行動に、日本国民を含め多くのアジア諸国民が不安を抱きだしている、と指摘するのでした。そして、興味深かったのが、あまり取り上げられる事の無い晋三氏の父方祖父、安倍寛の話で、彼が今言う処のハト派であり、これに対して母方の祖父、岸信介と対比する形で語られていた事でした。
そして、安倍晋三の国内における支持の強さは、‘昨今の中国’に対する強い姿勢にあるとしながら、古賀元自民党幹事長の安倍晋三の行動への疑念を紹介しつつも、安倍晋三という愛国者は、‘悔悛’し頭をさげる、そういった姿勢はどうもとれないようだ、と締めくくるのでした。
その特集に出てくる、国家救済、自主防衛力、現行憲法改正、集団的自衛権、神道、等、これらキーワードが並ぶとき、いやがうえにも戦前の日本国家像のイメージが浮かび上がってくる処と言え、彼らが抱く安倍首相の姿勢に対する些かの危惧の念が伝わってくるというものです。そして、日本と言う国は、アジア諸国の理解、連携なくしてはやっていけなくなるのに、これでいいのか、なにも言わない今の国民に、いらだちを感じる、そういった様子が伝わってくるというものでした。
この特集が店頭にならんだのが、日米首脳会談が行われる4月24日の直前だったことも印象的でした。内外メディアの伝える日米首脳会談は、日米の役割分担を確認し、同盟関係強化を再確認したとされるものでしたが、オバマ大統領は、安倍首相の進めんとする安保戦略を支持する形で‘軍事’負担のツケを日本に回す事で、米国内での政治環境に対応せんとするものだったと言うもので、日米同盟関係の質的変化を齎すことになったと言うものでしたが、その変化は、安倍晋三氏には(日本国民にとってではなく)都合の良いものになったと、映っていた筈でした。
昨年の秋口から安倍首相の動きが、経済復興より政治に向い出してきた事情を踏まえ、筆者は、とにかく政治は勿論大事だが、経済専一で進めること、つまりは「アベノミクス」の総仕上げに専念すべきと主張してきたのです。
3.新成長戦略と「アベノミクス第2章起動宣言」
(1)第4の矢:新成長戦略
かかる経過を経て、2014年6月24日、安倍政権は、アベノミクス第4の矢とも言える新成長戦略を打ち出しました。(後出 資料[2] 参照)
今回の新成長戦略は、前年の‘成長戦略’の失敗を克服し、経済の本格回復を目指さんとしたもので、とりわけ、経済の主役、企業の活性化を視点に置いた構造問題対応のシナリオとなっており、従来になく本気で取り組む姿勢が映るものだったと言えるものでした。
足元で進む人口減少、労働力の減少が成長力低下の最大要因との認識の下、その対策としての戦略軸は二つに絞られており、勿論、グローバル化と少子高齢化という構造変化の中での対応ということですから、それはこれまでとは次元を異にするような大きな改革が必要という事を示唆する処です。
その戦略軸とは、一つは‘労働力の減少に歯止めをかける’事、もう一つは‘生産性を引き上げる’事、としています。前者について具体的には、女性の就業率の向上、出生率引き上げを目指した税制にまで切り込んだ包括的な施策が提示されています。後者については、予て競争環境の強化こそが生産性の向上に資するものとし、改めて、企業の競争を阻害している規制の廃止・削減を進める事、要は規制改革の推進であり、規制改革こそが一丁目一番地、を再確認するものでした。周知の通り、これまで具体的進展を見る事の無かったテーマでしたが、今回は、関係省庁、業界団体の抵抗が強い「岩盤規制」と呼ばれていた雇用(労働時間、女性の雇用促進、等)、農業(農業組合の改革、等)、そして医療(混合診療の拡大、等)の分野での改革推進が、実施計画とも併せ、示されており、その点、評価される処です。が、要は実行の如何という事です。
規制改革に加え、企業の活性化への目玉政策として挙げられるのが企業減税です。これは、予て論点となってきたものでした。具体的には、アジアや欧州の主要国より高い現在の法人実効税率(平均36%)を2015年から数年間で20%台に引き下げると言うもので、今回はその方向性が明記されたと言うものです。これは国際競争の広がる現状からは、日本企業の競争力強化と言う視点、更には、外国企業の対日進出の促進と言う視点から実行されんとするものですが、これを裏返せば、法人税収の減少を賄うためにも新たなビジネスの創造を、というアクションに繋がるとするものです。その点では、規制改革で期待される成果も、税制面からサポートされることになるものと言える処ですが、政府税調辺りでは依然議論が続き、また消費税が上がり消費者が不利になっている矢先、企業には減税で有利になる、と反発もある処、これも安倍政権の実行力の如何が問われる処です。
いずれにせよ、各種規制の改革を通じて競争力ある産業構造に作り変えていく、言い換えれば構造改革ということですが、その点では、政治の出番を自覚した戦略といえる処です。
と同時に、企業も、新たな経済環境に応えていけるよう、つまりは持続的成長をめざし、従来の思考様式に囚われない、より創造的な姿勢で経営の合理化、深化を進めていく事が求められると言うものです。一方、こうした改革の推進と並行して、国としての支出構造の改革も不可避と言うものです。つまりは財政の構造改革です。然し、これには未だ具体的な戦略提案がなされていません。問題です。これは人口減少問題への対応とも重なる事案だけに時間を置くことなく戦略的な取り組みを示すべきと思料する処です。
発表の直後に行われた記者会見では、安倍首相は、法人税の構造を成長指向に変え、雇用を確保して行くとし、また「成長戦略にタブーも聖域もない。日本経済の可能性を開花させる為、いかなる壁も打ち破る」と断言し、同時に、政府が提出した成長戦略関連法案は約30本に及び、経済の好循環に向けた着実な取り組みを強調していましたが、問題は、それらが、如何にスピード感を持って具体化実施されていくか、にかかってくる処で、その点では、もはやノー・イクスキューズなのです。それにしてもメニューはてんこ盛りの様相、さて如何なものかと気にはなる処です。
・GPIF 改革 & コーポレート・ガバナンス強化
尚この際、注目されるのが、一つはGPIFの年金資金運用改革と、企業活動の活性化策としてコーポレート・ガバナンスの強化を謳っていることです。
前者については、冒頭、‘はじめに’で触れた通りで、130兆円と言う膨大な年金資金を擁するGPIFには、より効果的資金の活用を図るべしと、その資金の使途構成を見直すと共に、運営管理制度をも見直す、というもので、言うなれば米国カリフォルニア州の公的年金基金カルパース(CALPERS)をイメージせんとするものですが、とりわけ外国投資家からは評価される処です。
一方、コーポレート・ガバナンスの強化については、企業収益が大幅に回復し、手持ち資金も空前の規模に達している現在も、消極姿勢が変わらず、何よりも生産性向上への対応がほとんどなされていないのが問題と言うことで、企業統治の強化を成長戦略の柱に置いているのです。つまり労働から資本設備への代替が進んでいないという事、人的資源への投資も怠っているという事、で資金だけをため込むことでなく、こうしたリスク回避型経営を変えるべきを、訴えているのです。さもなくば、法人税減税効果も半減すると言うものです。もっとも、この辺になると企業経営への不必要な政府介入かと、いぶかられる処ですが。
因みに、6月27日は、3月決算企業、900社超の株主総会が行われていますが、今年の焦点はコーポレート・ガバナンスの強化でした。海外株主の存在が増すなか、経営を外部の視点から監視する社外取締役を導入する動きが広まっていましたし、買収防衛策が初めて秘訣されたケースもあった由伝えられています。つまり、企業の統治の在り方を巡り、株主と正面から向き合う企業統治の「改革元年」になったと言われる所以です。社内の利害を超え、外部の視点で経営を判断する社外取締役の存在が、日本企業でも「標準」になってきたと言うことでしょうか。
さて、新成長戦略が閣議決定されたこの後に続くのが、後述、集団的自衛権の解釈変更についての閣議決定でした。
(2)「アベノミクス第2章起動宣言」
さて、新成長戦略の決定を見たこの夏、それをフォローするように、安倍晋三首相は文藝春秋9月特別号に手記を投稿しています。そのタイトルは「アベノミクス第2章起動宣言」。そこでは、人口減少等、構造的課題への取り組みについて、人口を1億人で食い止める事や、女性パワーの活用だの、諸解決策が語られていました。また地球儀俯瞰の外交だとして、これまで47カ国、訪問外交の成果を謳っていました。そして‘頑張れば報われる’思想をも謳いあげています。そして最後に「日本を取り戻す」ための歩みを進めたいと、締めるものでした。
しかし、何故か‘ストンと胸に落ちることはなかった’のです。と言うのも、「日本を取り戻す」と言う言葉ですが、これが、これまでの‘高成長’に戻る事を目指すものとすれば、それは再び20年来の不況を生んだプロセスを追うことになるからです。
人口減少という構造的課題を抱える日本経済を今後とも持続可能なものとしていく為には、今までの行動様式、思考様式ではやっていけなくなることは、20年来の不況を通じて既に学習してきたはずです。つまり、その為には発想の転換が不可欠と言うものです。が、当該手記にはそれが見えてこないのです。要は、成長戦略もそうですが、日本と言う国を、どのような色に染めていこうとしたいのか、ここでも言うなれば国家観の欠如を痛感させられると言うものです。
4.日本の‘国のかたち’が変わった
・集団的自衛権行使容認
さて、2014年7月1日は、日本という「国の‘かたち’が変わった日」として銘記される処となりました。云うまでもなく、軍事行動を禁止している憲法9条について、その解釈を読みかえることとし、集団的自衛権行使(海外で他国の為、或いは他国と一緒に軍事行動を起こすこと)を容認する旨を安倍晋三内閣は、7月1日の閣議で決定したのです。戦後、戦争放棄を世界に宣言し、安全保障は専守防衛、civil power、soft-powerを持って臨むことを国是として歩んで来た日本でしたが、今後はmilitary powerをもってことに臨む、戦争することが許される国となったのです。
安倍政権が、憲法解釈変更で集団的自衛権の行使容認したことについて、内外の見方は、賛成反対は、ほぼ同率となっていますが、これまでの安倍晋三首相の行動様式からは、これが‘安倍晋三リスク’と映る処で、ことの推移如何では折角回復の道を歩みだした経済にも影を落とすことにもなりかねません。
・海外メデイア評
因みに、7月3日付Financial Timesでは、集団的自衛権行使容認の閣議決定について、‘ほぼすべての国は 「専門的に集団的自衛権として知られる権利」を保有しており、安倍首相の国家主義的なレトリックには嫌悪するかも知れないが、日本のやった事は、ただ「普通」の国になることにほんのちょっと近づいただけ’と、コメントする一方、NY Timesでは、‘日本は軍国主義に向かう’と、米英、対照的なコメントが伝えられる処でした。
ただ、Donald Keene氏は、憲法第9条は「The glory of Japan (日本の誇り)」ともされるものだけに、これを修正ではなく解釈を見直すことで、安倍首相はほぼ間違いなく負けたであろう国民投票の必要性を回避したが、これはdevious,つまり正道をはずれた、ごまかしでなかったか、と問うのです。つまり、これほどに大きな変更について、国民的議論が不足したまま‘政府だけ’で意思決定したことに疑問を呈するのです。と同時に、ある男性が憲法解釈変更に抗議して自分の体に火をつけた事件が報道に値すると考えたメデイアがほとんどなかったことが心配だ、とも指摘するのでした。そして、もう一つ、憲法解釈の変更が国会で承認されたとして、安倍首相は新たに勝ち取った自由で一体何をしようとしているのか、とも問うのでしたが、筆者の心に迫る処です。
閣議決定後の記者会見で、安倍晋三首相は自衛隊の海外派兵はない、と断言していたのですが、8日、訪問中のオーストラリアでの国会インタビューでは、皆さん(オーストラリア軍隊)と一緒になって戦う準備ができた、と発言しているのです。内と外で、発言が異なるのは如何なものかと、疑問は残るばかりです。かつて、中曽根内閣時代、米国から国連が認める集団的自衛行動に参加するよう要請があった際、当時の後藤田官房長官は、いかなる限定的行動であれ、これは蟻の一穴となる、として絶対反対に回り、中曽根首相はこれを受け入れた経緯がありましたが、瞬時、思い起こす処です。
それにしても、敗戦国家日本が戦後経済大国になれたのは軍事大国への道を避けたからで、安保論議に経済の視点が欠落していることが大いに気がかりと言うものです。例えば、米中関係について言えば、いろいろ難しい問題があるとはいえ、冷却することがないのは米中経済の深い相互依存があるためです。グローバル経済の時代にあって緊張を防ぐ近道は遠まわりに見えても、経済の相互依存を深めることと思料します。戦後、敗戦国の日本が経済大国になれたのも、色々事情はあったにせよ、軍事大国への道を避けてきたからこそ、なのです。日本の財政の困難な事情をも併せ勘案するとき、この路線を踏み外すこととなるような行為は容認できるものではない筈なのですが・・・。
折角、今回の新成長戦略については海外からも高い評価を得ながらも、その政治姿勢への懸念が募る状況からは、アベノミクスの加速は難しいのではと危惧されると言うものです。
5.安倍晋三政権の罠
・オフ・ターゲット(Off target )
さて8月26日付、英紙Financial Times は、これまでの安倍晋三首相の行動様式に照らし、`Off target’ (的を外すアベノミクス)と題し、かつて絶大の支持率を誇った「アベノミクス」の提唱者、安倍首相はいま厳しい状況にあるが、その要因は、彼自身にあると、次のように云うのでした。
つまり、‘安倍首相は、民意をよく介することなく、世間の人々には好まれていないことの実現に政治資源をふんだんに使っていることにある’と言うものです。具体的には、憲法9条(第1項)の解釈改憲、そして原発再稼動の推進対応を指す処ですが、それ以上に安倍首相にとって最大の政治的資産だった経済政策に対する不満、疑念に真正面から向き合う事がないことにあると言うものでした。言い換えれば、それは政府の政策と国民の期待の間にギャップが広がりつつあるという事でしょうか。とすれば、そこには「国民のため」が欠落していると、結論されるという処です。まさに安倍政治の罠、と言う処です。
・安倍改造内閣
こうしたメデイア評を知ってか、知らずか、安倍晋三首相は人心の一新と、9月3日、内閣の改造を断行しました。彼が云う「日本を取り戻す」に向けた改造という事の由で、地方創生相や、安保法制相、女性活躍相の新設など、重視する課題へ全力投球する姿勢を示したものと、評される処でした。
序でながら、海外の反応は、どうだったか。その直後、9月4日付の米Wall Street Journal では、` New cabinet aims to advance economic goals, raise military profile ‘と、経済改革の目標の達成を目指す人事とする一方で、軍事力の強化を目指す姿勢を映すものとし、また同じ4日,Financial Times では‘Abe keeps cabinet conservative ‘ と、保守化を強める安倍政権への危惧を伝えるのでした。又、The Economist(Sept.6) では、近時の経済指標、とりわけGDP指標の現状を踏まえ、安倍首相の政権運営に対する評価の低迷克服を狙った人事とする一方、修正主義者の入閣を進めていると、政権の右傾化を懸念するものでした。
・安倍政権リスク - 女性大臣辞任、消費増税、原発再稼動
処で、改造内閣発足後、僅か50日のタイミングでハップニングが起きました。「女性が輝き働く社会」をスローガンに掲げる安倍晋三首相は、今回の改造人事では、目玉人事として、5名の女性大臣を配したのです。カンバン娘という処でしょうか。然し、その内、二人の女性大臣、小渕優子前経産大臣と、松島みどり前法務大臣が10月20日、同時に、辞任に追い込まれたのです。その背景にあるのが不透明な会計処理問題、等、言うなれば政治とカネの問題でしが、それには、今再びと天を仰ぎたくなるものです。このほかにも安倍政権で追及を受ける閣僚が続く様相にあるのですが、すわ、利益誘導型の「古い自民党」の復活かと、安倍晋三首相のガバナンスが、従って政権運営姿勢が再び問われだしたというものです。因みに、大臣の辞任があった直後の世論調査では、内閣支持率は48%と50%を切るまでに至っています。(日経、10月27日)
加えて、来月、12月には、消費税増税問題について政策決定が予定されています。勿論、安倍晋三首相は経済指標を見極めたうえで決定するとしています。しかし、経済指標もさることながら、これら‘政治指標’からは極めて難しい状況に追い込まれてきた様相にある処とみられるのです。仮に、増税を決定すれば、回復基調を示し出した経済に水を浴びせることになる事、必至でしょうし、そうなれば、これまでの政策努力は決定的なダメージを受けること予想される処です。然し、仮に引き上げが延期されるとなれば、財政規律はどうなのかと、日本経済の脆弱性が再び取沙汰されることになる筈です。
世界経済の景気停滞が再び云々される中、円安の進行、輸入価格の上昇で円安倒産も増え、いつしか円安批判が高まる気配ともなっています。つまり、安倍首相を政権の座に押し上げた円安が、政権基盤を揺さぶり始める状況が生まれてきたというものです。
その他、原発再稼動問題、集団的自衛権行使にかかる法整備、等々、安倍政権の運営を巡るリスク環境は急速に厳しさを増す処となってきています。どうもアベノミクスは今、正念場を迎えたと、思えてなりません。
・戦略行動、今一度
そうした中にあって、なお重要な事は、現下の経済を確実に持続可能なものにしていく事、の筈です。その点、残された手があるとすれば、それこそは‘規制改革を徹底的に進める事’、そして、それを介して構造改革への道筋を実践的に示していくこと、それしかないのではと思料するのです。併せて、日本経済への信頼を確保して行く為にも、財政健全化への姿勢の堅持を確認する事、そして、その姿勢を既に指摘されている2020年度黒字化に向けた工程表として明示していく事と思料するのです。勿論これが、現下においてはデフレ効果への配慮が必要とされる処でしょうし、関係団体、組織等のinterestも絡み、簡単ではないことでしょうが、この二つは同じcontextにある処、とにかく具体的アクションを起こすこと、と思料するのです。
安倍晋三首相のこれまでの行動を、時系列を追ってみていくにつけ、いまやon the brinks、 瀬戸際に追い込まれてきた、とその感を強めるばかりです。もはやアベノミクスどころではないと言う処でしょうか。
おわりに:富国裕民
処で、アベノミクスには、そのモデルとなる人物の存在があったのです。それは安倍首相が「自分を勇気づけてやまない先人」と、する人物、高橋是清です。彼は、昭和初期、デフレ不況にあった日本経済を、いわゆる「高橋財政」を以って、克服した財政家であり、政治家でした。アベノミクスは第1の矢、第2の矢の金融財政政策では、まさに、その高橋が取った財政政策に倣うごとくと、いうものです。ただ、その彼は、日本経済の回復に努力した財政家であり政治家でしたが、その努力は国民の生活向上に向けられていたのです。あの軍国主義の時代にあって、彼は、大蔵大臣として軍事予算の削減に努め、それ故に軍部からは疎まれテロの犠牲になったのですが、富国強兵でなく、常に彼は‘富国裕民’を旨として行動したとされています。さて、安倍晋三氏は、モデルになった男「高橋是清」に学び、日本国民と共に、どのように歩もうとしていたのか、質してみたいと、思いは深まる処です。
以上
[ 資料1] アベノミクス第3の矢:成長戦略の概要 (2013年6月13日)
[ 1 ] 日本産業再興プラン(ヒト、モノ、カネを活性化する-日本の産業を強くする
1. 産業の新陳代謝の促進
2.雇用制度改革・人材力の強化
3.科学技術イノベーションの推進
4.世界最高水準のIT社会の実現
5.立地競争力の更なる強化
6.中小企業・小規模事業者の革新
[ 2 ] 戦略市場創造プラン -新たな成長分野を切り開く
1.国民の「健康寿命」の延伸
2.安全・便利で経済的な次世代インフラの構築
3.クリーン・経済的なエネルギー需給の実現
4.世界を引き付ける地域資源で稼ぐ地域社会の実現
[ 3 ] 国際展開戦略 - グローバル経済で勝つ
1.戦略的な通商関係の構築と経済連携の推進
2.海外市場獲得のための戦略的取組
3.我が国の成長を支える資金・人材などに関する基盤整備
[資料2] 新成長戦略の概要 (2014年6月24日)
1.「骨太の方針」の主なポイント:
(1)経済再生の進展と中長期の発展に向けた重点課題
・女性の活躍をはじめとする人材力の充実・発揮
・イノベーション促進等、民需主導の成長軌道への移行に向けた経済構造改革
・魅力ある地域づくり、農水産業・中小企業等の再生
・安心・安全な暮らしと持続的可能な経済社会の基盤確保
(2)経済再生と財政健全化の好循環
・財政健全化目標:20年度までに基礎的財政収支の黒字化
・法人税改革:法人実効税率(現行:35.64%)を20%台に引き下げる
・社会保障改革 ・社会資本の整備
2.規制改革 ― 産業発展のために規制改革は不可欠(規制改革会議)
・医療制度改革:保険外併用療養費制度(混合診療)の改革
・雇用制度改革:労働時間規制の緩和―多様な働き方の拡大
・農業改革:全国農業協同組合中央会(JA全中)の廃止(3~5年経過)を柱とする農協改革(農業就業者人口は現在、240万、ピーク時の6分1)、株式会社化の促進
・電力販売の自由化:2016年より全面自由化実施(6月11日参院で成立)、7兆円市場。電力事業参入事業者、電力販売事業者との組み合わせ等、新ビジネスの形成
・年金運用改革:GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の年金基金(12
8億円)運用の見直し(株比率引き上げ)を9~10月に前倒し的に実施(アベノミクスに伴う成長や株価上昇の果実を取り込みやすい運用に変えると言うものだが、リスクは高まる処。)同時に、年金給付制度の見直しの実施。― 成長の果実を基金の運用資金への取り込み、運用のリスク分散、と。