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監査等委員会設置会社への移行表明企業、アンリツ ~監査等委員会設置会社は運用の監視が重要~

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アンリツ株式会社が今年6月の定時株主総会で決議されることを条件として監査等委員会設置会社へ移行する方針を決議しました。アンリツにはその心配はないと思いますが、しっかりした内部監査部門を持たず常勤の監査等委員を置かなくも会社法の違反にはならない監査等委員会設置会社については、外部の眼、例えば投資家の眼から見るときはその運用の実態に十分注意を注ぐ必要があると思います。

 

アンリツ株式会社が今年6月の定時株主総会で決議されることを条件として監査等委員会設置会社へ移行する方針を決議したことを1月29日に開示しています。アンリツは現在、監査役会設置会社でかつ取締役会の任意の諮問機関としてそれぞれ社外取締役を委員長とする指名委員会と報酬委員会を持ち、非業務執行の独立社外取締役3名、社内の業務執行取締役5名、社外監査役2名、社内常勤監査役2名とコーポレートガバナンスの体制としても先進的な体制を取っています。
 アンリツは移行の理由について3点挙げています。
1.連結海外売上高比率や(2013年度70.4%)や外国人持株比率(2014年9月末42.3%)が高い現状を踏まえ、グローバルな視点から理解を得やすいガバナンス体制を志向して企業価値の向上に取り組んできたこと
2.希少な独立社外取締役を集約し取締役会の構成員とすることで、取締役会における社外取締役の比率を高め、より一層の透明性の向上や株主の視点を踏まえた議論の活発化が期待できると判断したこと
3.監査等委員会を設置し、監査等委員である取締役に取締役会における議決権を付与することで監査・監督機能の強化につながると判断したこと
ここで挙げられた理由を見ると、指名委員会等設置会社に移行しても同様の理由が挙げられると思います。アンリツは監査等委員会設置会社移行後も諮問員会である指名委員会、報酬委員会は継続するとしていますが、それではなぜ指名委員会等設置会社ではなく監査等委員会設置会社を選んだのでしょうか。
以下は、筆者の推察ですが、その理由は監査等設置会社が経営側にとって監査役会設置会社及び指名委員会等設置会社に比べて非常に便利な構造になっているからではないかと思います。
1.取締役に対する業務の委任の自由度が増すこと(会社法399条13、第5項、第6項)
2.常勤の監査等委員の設置義務のないこと
3.任務懈怠の推定規定の摘要がされない条件が規定されていること(会社法423条4項)
4.諮問委員会である指名委員会、報酬委員会は指名委員会等設置会社の指名委員会、報酬委員会と比べると拘束力が弱いこと
しかしながら、上記の1~3の事項はコーポレートガバナンスの面から見ると運用次第ではこの制度をかなり緩い制度にするものだと思います。つまり、監査等委員の監査が合議制であることや監査等委員の監査が内部監査に大きく依存するのでしっかりとした内部監査部門がない企業が採用するとコーポレートガバナンスもかなり緩んだものになるおそれがあります。
また、監査等の「等」が意味する「(監査等委員会の決議に基づいて)株主総会において指名及び報酬について意見を陳述する権利がある」という点に関し、監査等委員の責任をどう考えるかという問題について、相当の責任を負う可能性があるという見解もあることに注意する必要があります(山口利昭弁護士:ビジネス法務の部屋http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/)。
アンリツはおそらく常勤の監査等委員を置くと思われるし、しっかりした内部統制部門ももっておられると思いますのでそれほどの心配はないでしょうが、しっかりした内部監査部門を持たず常勤の監査等委員を置かなくも会社法の違反にはならないこの制度については、外部の眼、例えば投資家の眼から見るときはその運用の実態に十分注意を注ぐ必要があると思います。
(一般社団法人 実践コーポレートガバナンス研究会ブログより)
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