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来る年2017年は、 ‘迷走する世界’の幕開け?

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はじめに:2016 Person of the Year

12月7日、米タイム誌は、同誌恒例の「今年の人、2016年」にDonald Trump 氏をとり挙げました。今年1年を通じて、良かったのか、悪かったのか、色々の出来事に、極めて強い影響を与えてきた仁とするものですが、彼について同誌は「過去の政治慣習を廃し、新たな形を作り出した」と、その理由を挙げると共に、「トランプ氏の勝利は、傲慢で守られた支配階級に対する長く見過ごされてきた怒りを象徴している」と分析するものでした。
さて2016年、欧米の先進国では、有権者の反グローバリズムが吹き荒れ、英国ではEUからの離脱、また米国では次期大統領選で「米国第一」を掲げる不動産王、トランプ氏が勝利を収めたことで、世界をあっと驚かせると同時に、保守化の高まりを強く印象付ける年となりました。この両者に共通する事情とは周知の通りで、経済格差拡大への市民の不満、移入低賃金労働者の増大で奪われる雇用機会への不満、等々こうした不満を背にしたポピュリズムが高まり、政治への現状不満の爆発と説明される処で、要は、これまでの自由や人権を軸としたリベラリズム、グローバリズムへの反撃とも言われる変化です。

周知の通り、グローバリゼーションとは地球規模の自由化です。モノ、カネ、ヒト、更に文化の自由な交流です。然しその自由は、時として人々を阻害し、不安に陥れることになると言われます。となると人は強固なアイデンティティ―を求め、純化路線に走り、ナショナリズムや排外主義に突き進むことになるというものです。
今、‘America first ‘を掲げるトランプ氏が次期米大統領として現れた事で、こうした社会的化学反応が一挙に進みだし、これまでの欧米先進国が経済発展の規範としてきた新自由主義なる思考様式が否定され、従って行動様式の構造変化が不可避となる様相にあります。

当然のこととして彼の言動を巡り、連日メデイアは精力的に報道していますが、2017年1月20日以降、彼はどのような政策展開を図っていくのか、そうした情報に世界は、日本は、翻弄されていると云った状況にある処です。
そうした一喜一憂する日本政府と野党の姿に、文春新年特別号のコラムでイタリアから帰国中の作家、塩野七生氏は今更ながらげんなりとしながらも、世界最大で最強の国のことだから、ある程度はやむをえないことかと云い、また、他国に無関係では生きていけないのは現実なので、米国の動向に注意しつづけるのも当然だろうが、こういう時期こそ、日本さえその気になればできることを実現化してみてはと、例えばTPPがどうなろうと、日本の農業の抜本的改革(注)なら、やり遂げたと言えるように、と提言していましたが、筆者も思いを同じくする処です。
(注)政府は11月29日、JA全農の組織刷新を柱とする農業改革方針を決定。但し、規制改革会議の提言や、自民党農林部会長の小泉新次郎氏が目指していた全農改革にかかる具体的な数値目標、改革期限目標などは先送り。

勿論、今回のトランプ政権の意味は、単に米国だけの問題ではなく極めてグローバルなコンテクストで理解されるべきは云うまでもありません。その点については先の弊論考においても筆者流の分析と提言を行っていますが、いまなお多くの、多面的側面からの分析、論考の断つことはありません。

処で、大統領就任前ながらトランプ氏は、既に大統領然として行動をとり始めています。
詳細は本文にて触れますが、メキシコに工場移転を計画中の企業「キャリア」に自ら乗り出し、その計画を覆させ、当該雇用の確保を果たしたと喧伝するなど、自身の趣旨に沿った経営をと、企業介入を始めています。一方、対外的コミットメントの修正を迫る中、とりわけ安保戦略上Asian pivotalとしてきた米国のアジアへのインボルブメントの修正でアジアでの空白が懸念される中、これまで米中間でも確認されてきた「一つの中国」論に対し、貿易上の事由を以って、これに異論を唱え出しています。折も折、中国の習近平主席が1月に世界の主要リーダーが集まるダボス会議に出席するとの情報があり、世界はざわついでいますが、早速に、英Financial Times 紙のコラムニスト、Philip Stephensは同紙12月9日付で「Xi,Davos and the world in 2017」と題し、興味深い解析を展開しています。

これらはトランプ旋風に絡む話題という事ですが、12月、日本で行われた今年4回目の日ロ首脳会談の推移を、こうしたトランプ旋風に重ね合わせ見るとき、‘迷走する世界’すら示唆する新たな国際関係の構図が見えてくるというものです。つまり2017年の行方を考察していく上での興味深い視点が見えてくるというものです。そこで今回は2016年の総決算の意味と、併せ2017年の行方を考えていく為の手立てとして、これら三点に絞り、論じることとしたいと思います。
(2016/12/25)
目  次

1.トランプ次期大統領の出現で世界はどう変わる   ・・・P.3

(1)「米国第一主義」のリアル
・トランプ流ビジネスの作法
・米企業は、ニュー・ノーマル(新常態)
(2)習近平主席、1月ダボス会議に出席する
・「一つの中国」をかく乱させるトランプ発言
・Stephens氏の解析―融解のグローバル秩序

2.日ロ首脳会談と、会談から透ける‘迷走する世界’のかたち・・P.9

(1)日ロ首脳会談
(2)2017年、‘迷走する世界’の幕開け?
・日本の出番

おわりに:安倍首相、ハワイ・アリゾナ記念館慰霊訪問 ・・・P.12

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