高まる ‘反・新自由主義’の潮流と、日本経済の可能性
はじめに:脅威にさらされるグローバル資本主義
雑誌「三田評論」10月号で、この夏、87歳で亡くなったアルビン・トフラーを悼む慶大名誉教授、佐野陽子氏の寄稿エッセイを読みました。A.トフラーと佐野陽子氏との接点は、1990年11月30日、慶大はトフラーに名誉博士号の授与を決定したのですが、その学位授与式に招かれた彼が同大学を訪問した際、当時、慶大商学部長にあった佐野陽子氏がトフラー夫妻を迎える立場にあった事が縁だったという事ですが、その際の同夫妻の好印象を、彼らの著作(最後の著作「富の未来」は夫婦の共著)の先見性と併せ記し、回顧するものでした。
A.トフラーと言えば1980年刊行の「第三の波」で未来学者としての名を不動のものとしま
したが、インターネットが出現する20年も前に情報化社会を予言したということで注目を集めた事は周知のところです。続く「パワーシフト 21世紀へと変容する知識と富と暴力(上)(下)」(1990)、「富の未来(上)(下)」(2006)を通じて2050年までの未来予測を行っていますが、少なくとも、21世紀に入るまでの世界経済は、彼が予測していたように情報通信技術の革命的な進歩を背景にグローバル化という名の一大発展を遂げてきました。因みに、2005年、T.フリードマンが著した世界的ベストセラー、‘The world is flat,2005’、「フラット化する世界」で描かれていた経済活動の姿はキラキラ輝くものでした。
それから十年、今、欧米先進諸国では自由貿易反対、グローバル化反対の運動が巻き起こってきています。その最大の理由は、欧米諸国で起きている所得格差拡大問題です。そしてその背景にある低賃金外国労働者の移入で雇用(機会)が奪われることへの不平不満、これら全てがグローバル化の進行に因るものとして、移民の受け入れ反対、自由貿易の反対と、グローバル化ストップ運動がおこっており欧米諸国ではいま、保護主義、排他主義へと内向き姿勢を強める状況にあります。云うまでもなくこれら動きはグローバル資本主義にとっての脅威と映る処です・・・