もう一つの問題
中国が抱える問題。
これまでに(1)外貨準備高の逓減、(2)人民元安(の傾向)、そして(3)過剰債務問題を見てきました。
さて、もう一つの問題は資本逃避、いわゆるキャピタルフライトと言われるものです。
この問題は中国共産党幹部が個人的な資産を中国から海外に移しているといった話との関連でよく報じられてきました。
ただ恐らくは量的な規模の点からすると、もっと大きな問題は、これまで中国に積極的に投資してきた世界のマネーが中国にさほど魅力を感じなくなり、中国から引き揚げているといった点でしょう。
たとえば昨年、ゴールドマンサックスは「BRICファンド」を閉鎖しました(閉鎖と言っても実際には清算ではなく、同じくゴールドマンが運営する「新興国株式ファンド」へ統合する形を取りました)。
BRICファンドの運用成績は過去5年間でマイナス21%となり、投資家による資金の引き上げが相次いだのです(運用資産は2010年の8億4200万ドルから9800万ドルへと88%も減少;『こちら』)。
当然このファンドから中国に投資されていた資金もその多くが引き上げられてしまったものと推測されます。
資本逃避は、ファンドの形で中国市場に投資していた外国資本の撤収だけに留まりません。
例えば香港の大富豪、李嘉誠はグループ会社が持つ香港や中国本土の資産売却を進め、代わりに英国の携帯電話会社、鉄道車両メーカーなどを買収しました(『こちら』及び『こちら』)。
(出所:Wall Street Journal; Sept. 6, 2015)
これはM&Aの形を取った一種の資本逃避と(見方によっては)見ることが出来ます。
傘下のハチソンワンポアは中国・香港よりも欧州で利益を上げるようになり、李嘉誠はグループ会社の登記地を昨年香港から英領ケイマンに移しています。