Home»blog»本当に強い企業とは、「変化に対応していく企業」ではなくて、「自ら変化を作り出せる企業」

本当に強い企業とは、「変化に対応していく企業」ではなくて、「自ら変化を作り出せる企業」

2
Shares
Pinterest Google+

富士フイルムホールディングスの古森会長・CEOは、

デジカメの普及でかつて利益の3分の2を占めた写真フィルムがなくなる危機を、

「自動車が売れなくなったトヨタ、鉄が売れなくなった新日鉄と同じ」

と社内で語って、業態転換の必要性を説いたといいます。

東洋経済新報社 『会社四季報ONLINE』 の 『“近未来”を見据えた投資術』 の第11回は、『自動運転時代の到来』で変わる業界について。

Toyo2

先日もご紹介しましたが、チャーリー・ローズ・ショーに出演したグーグルのラリー・ペイジの話から始まります。

前段部分を少し引用(青字部分)しましょう。

* * *

『アップルのスティーブ・ジョブズはその卓越したプレゼン能力で聴衆を魅了した。

一方、グーグルのラリー・ペイジ(共同創業者兼CEO)や、テスラ・モータース、スペースXを創業したイーロン・マスクなどは、プレゼンがさほど上手くない。

インタビューに応じることもあまりない。

しかし米国の公共放送で20年以上もインタビュー番組を手がけ、オバマ、ブッシュ、クリントンといった歴代大統領に対しても独占インタビューを行ってきたチャーリー・ローズは別格だったのかもしれない。

どちらもローズの誘いに応じて、彼の番組に出演している。

ローズは出演者の「本音」を引き出すことが巧みであることで知られている。

昨年のことだが、ローズと共にTED2014に登壇したグーグルのラリー・ペイジは、自動運転に取り組む理由について、ローズに問われてこう答えた。

「18年前に自動運転車を開発している人々について知り夢中になりました。

実際にプロジェクトを始めるまでにしばらくかかりましたが、今は世界を良く出来るかもしれない可能性にとても興奮しています。

世界では毎年2千万人以上の人が交通事故に遭っています。

今や交通事故が34才未満のアメリカ人にとって死因のトップとなっています」。

インタビューアーのローズが「つまり命を救いたいのですね」と語りかけると、ペイジは「ええ」と頷き、こう続けた。

「それに空間を上手に利用し暮らしを豊かにするんです。

ロサンゼルスの半分が駐車場や道路です。面積の半分がです」。

そしてこう結んだ。

「私達はもうすぐそこまで来ています。完全自動運転で、すでに16万キロ以上も走行しているんです。自動運転車をこんなに早く世に出せるのが嬉しいです」。

視聴者には、一見したところまだ学生気分が抜き切れていないようなラリー・ペイジが印象的だった。

この若者が時価総額で世界2位の大企業を牽引する経営者なのか・・。

その彼が自らの口で語る「グーグル自動運転参入の理由」はひじょうに単純であり、純粋なものだった。

「交通事故をなくしたい。空間を上手に利用したい」。

自動運転の技術は大きく4つのレベルに分類される。

米国では運輸省の国家道路交通安全局(NHTSA)が公表している。

日本でも内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)がほぼ同様の分類を発表、「今後、国際的整合性の観点から必要に応じて見直す」としている。

両者の定義は微妙に違うが、どちらの分類においても、自動ブレーキなどの安全運転支援システムは「レベル1」、ドライバーが全く関与しない完全自動走行システムが「レベル4」と定義される。

完全自動走行のレベル4については、日本の国土交通省によると、2020年代後半以降に市場化が期待されるとしている。

しかしグーグルのラリー・ペイジがチャーリー・ローズに語ったように、意外に早く世に出てくるかもしれない。

すでに欧州や米国の一部でその兆しが見られる。

先月のことであるが、スイスのベンチャー企業であるベストマイル社が、レベル4に該当する完全自動運転のバスをスイス、ヴァレー州シオンで来春より走行させると発表し、世間を驚かせた。

ベストマイル社はスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の卒業生2名によって昨年設立されたばかりの会社。

シオンという人口約3万3000人の街の中で、しかも限られたエリアでの2年間限定の試験的運行だが、無人運転である。

米国サンフランシスコから40キロメートルほど東に位置するサンラモン市でも来夏似たようなプロジェクトがスタートする。

市内にはビショップランチという2.4平方キロメートルのビジネスパークがあり、ここに多くのオフィスビルが建てられているが、この中で自動運転バスを走行させる予定である。

フランスのイージーマイル社からシステムを導入する予定でレベル4の無人運転だ。

日本でも、ディー・エヌ・エー(2432)と来年に上場するのではないかとの観測が流れているZMP社が共同で設立した合弁会社ロボットタクシーが、来年初頭から藤沢市の公道上で自動運転タクシーの運行を開始する。

モニターとして選ばれた50名ほどの周辺住民を乗せ、自宅と近辺にある大手スーパーとの往復ルート(約3kmほど)を走行する。

有人の自動運転(レベル3)であるが、公道における無人の完全自動運転(レベル4)の環境整備を目的としている』

* * *

さて自動運転時代が到来すると、いったいどの業界がどんな影響を受けるのでしょうか。

詳しくは 『会社四季報ONLINE』 に掲載した 『こちら』 の記事をご覧ください。記事の後段部分で「自動運転が影響を及ぼす業界の1つ」について書いています。

* * *

四季報ONLINEに掲載した記事のような環境変化が現実のものになるのかどうかは、ほんとうのところはまだ誰にも分かりません。

しかしコンピューターの進化によって、(記事で触れた業界だけでなく)多くの業界で事業環境ががらりと変わってしまう未来が訪れるようになるかもしれません。

冒頭でお話ししたように、富士フイルムはデジカメの普及で写真フィルムがなくなる危機が迫るなか、思い切った業態転換を図りました。

一方、業態転換に失敗した米国のイーストマン・コダックは2012年、経営破綻に追い込まれました。

コダックと言えばかつては全米フィルム市場の90%を握っていた名門企業です。

人工知能を搭載した自動運転車の出現は、多くの分野でかつて富士フイルムが経験したような業態転換や事業変革を促すことになるかもしれません。

『近未来を見据えた投資法』とはこうした様々な変化を読み取り、株式投資に活かしていくことです。

しかしそれは、『時代の変化に上手く対応していく企業に投資していくこと』ではありません。

えっ、違うんですか、と思う方もいるかもしれません。

本当に強い企業とは、「変化に対応していく企業」ではなくて、「自ら変化を作り出せる企業」だからです。

我々が投資対象として考えるのは、後者の方です。

(Hidetoshi Iwasaki’s Blog)

Previous post

つるべ落としのような下落

Next post

終わりの始まり(11):EU難民問題の行方