成長戦略を活かす「リスク・マネジメントと保険の手配」(その3) 重大事故/事件に学ぼう - ① 環境汚染 森島知文
成長戦略を活かす「リスク・マネジメントと保険の手配」(その3)
重大事故/事件に学ぼう - ① 環境汚染
2014/10/1 森島知文 |
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国内外において様々な重大事故や事件が起こるたびに、直接/間接を問わず日本企業が何らかの損害等の影響を受けているケースが多々あるが、それを他山の石として企業は学んでいるだろうか? 自然災害や訴訟/賠償に加えてテロや独禁法違反等々、重大事故や事件が起こるたびに、当該国および関係国で法制度が変更になったり、新たな法律が制定されたりもしているが、それを注意深くウォッチして適切な対応/対策を講じているだろうか? 経済がボーダレス化し成長戦略の最速手段として欠かせなくなってきているM&Aで、迂闊にやり過ごすと成長どころか甚大な将来債務を抱えることになる「環境汚染」の問題を最初に取り上げたい。日本でも、水俣病や神通川水銀中毒や尼崎公害等の「環境汚染」があり環境関係の法整備が進んできているものの、日本社会/日本人の寛容に企業の甘さがまだまだ残っているようだ。私のLos Angels駐在時代、日本バブルの金の力で企業買収やビル購入が盛んにおこなわれており、その中には買収した工場の土地にPCB等の汚染物質が見つかりその廃棄処理、またはアスベストにまみれたビルの除去費用に多大な費用負担(損害)を日本企業が負わされたのを目の当たりにしてきた。そこで世界で一番厳しいと言われている米国の「包括的環境対処・補償・責任法(Comprehensive Environmental Response,Compensation and Liability Act of 1980;CERCLA(通称スーパーファンド法))」の制定に至った「ラブ・カナル事件」とそれによって誕生した「環境汚染賠償責任保険」の特徴について解説することにする。 1. ラブ・カナル事件とスーパーファンド法制定(米国) 【スーパーファンド法】 このように、米国において企業に対する環境規制は厳しく、例えば、工場設立のために買収した土地が化学物質に汚染されていると知らなかった場合でも、元の所有者のみならずその買収者にも管理責任が及ぶ制度となっている。またSOX法(サーベンス・オックスレー法)に従い、環境に関係するビジネス・リスクの公表が求められてきている。さらに米国会計基準理事会(FASB)解釈指針47条(FIN47)では、将来見込まれるアスベストや埋没油層など環境に配慮した処分が要求される資産の除去債務を負債として記録しなければならないとされている。 2.環境汚染賠償責任保険(Environmental Impairment Liability)の誕生 1080年代に米国で誕生した「EIL」保険は、AIU保険会社が「環境賠償責任保険」として1992年に日本で認可取得し、現在では大手国内保険会社並びに一部の外資保険会社で販売されている。 【環境汚染賠償責任保険発動のメカニズム】 1)この保険で対象となる損害 2) この保険で担保できない主な事由 (*1)免責事項に明記されていない約款の保険会社もある 3)環境リスクに対応する「環境汚染賠償責任保険」への加入メリット
④【コンサルタント機能】 (*1)「環境汚染免責を削除する特約」が一部の保険会社で開発されている。 直近では、米国ルイジアナ州南東の沖合約80キロにある国際石油資本(メジャー) B社所有の石油掘削基地「ディープウォーター・ホライズン」で2010年4月20日に爆発が発生し、5,000バーレル(約80万リットル/1日当たり)の原油が流出した事故があった。B社の負担総額は、汚染海域原状復帰への責任に加え、被害を受けたメキシコ湾沿岸諸州や民間企業、漁民などからの集団訴訟も起こされ、訴訟金額は120億ドル(1兆1,100億円)の巨額に上がったが、B社は、ディープウォーター・ホライズン基地に関する他の企業(日系M社の米孫会社、スイス系T社、米C社等)に対して、積極的に責任分担による損失負担を要求。その結果日本企業のM社の親会社が600億円相当の負担を強いられたようだ。 4.終わりに 以上 |