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第34回 犯罪の被害者と加害者その5 : 被害者参加制度

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「犯罪被害者等基本法」の法律の目的達成のための具体的施策としては、現在のところ、3つの制度があります。① 「被害給付金制度」、②「被害者参加制度」、③「損害賠償命令申立て制度」です。前回(第33回)では、「被害者給付金制度」を取り上げました。今回は、「被害者参加制度」を取り上げ、次回は、「損害賠償命令申立て制度」を取り上げます。

被害者参加制度とは

2009年(平成21年)3月3日の読売新聞(14版2面)は、「被害者参加まず一歩」と題して、次のような記事を載せています。

犯罪の被害者やその家族が刑事裁判に参加して、被告人質問をしたり求刑について意見を述べたりできる「被害者参加」制度が昨年 [2008年]12月に始まって3ヵ月がたった。「参加して良かった」と評価する声が出ている一方、望んだ判決や被告の反省が得られないことへの落胆もみられる。
これまでは傍聴人に過ぎなかった被害者が、被害者参加制度の下では、検察官側の席に座り、被告人に直接質問することなどが出来るようになりました。裁判の流れに沿って眺めると、以下の点が特徴的です。

裁判の流れ    被害者参加人ができること

開廷 ① 検察官側の席に座る。
証人尋問 ② 情状面に限り、証人を尋問する。
被告人質問 ③ 被告人に直接質問する。
最終意見陳述 ④ 検察官とは別個に、事実または法律の適用について意見を述べる
判決
被害者参加制度の基になっている2つの法律
上記のような特徴を創設した被害者参加制度の基になっているのは、2つの法律です。「刑事訴訟法(昭和23年7月10日法律第131号)(注1)」と「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(平成12年5月19日法律第75号)(注2)」です。
① 一定の犯罪(すべての犯罪ではありません。)について、被害者参加人または委託を受けた弁護士は、公判期日に出席することが出来ます(注4)。検察官とのコミュニケーションを密接にするために、検察官の近くに座ることになっています。
② 被害者参加人または委託を受けた弁護士は、情状証人の供述の証明力を争うために、その情状証人を尋問することが出来ます。例えば、「私は犯罪とは関係ないので夫のために損害賠償する気はありません」と(裁判の前には遺族に)言っていた被告人の妻が、情状証人として裁判に出て「誠意をもって損害を賠償します」と証言したときなどに、(その証言の証明力を争うために)反対尋問することが可能となります(注5)。
③ 被害者参加人または委託を受けた弁護士は、被告人に対して質問することが出来ます(注6)。
④ 被害者参加人または委託を受けた弁護士は、事実または法律の適用についての意見陳述をすることが出来ます(注7)。従前から認められていた被害者等の意見陳述(被害者の心情その他に関する意見)の制度も併存して残されています(注8)。ただし、両者は別物で、事実または法律の適用についての意見陳述をすることが出来るのは、被害者参加人または委託を受けた弁護士に限られます(注9)。

脚注

注1 刑事訴訟法・第2編・第3章・第3節・被害者参加(第316条の33から第316条の39まで)。

注2 犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律・第4章・被害者参加弁護士の選定等(第5条から第12条まで)。

注3 刑事訴訟法第316条の34。

注4 刑事訴訟法第316条の36。

注5 全国犯罪被害者の会(あすの会)、「被害者参加制度・損害賠償命令制度」Q & A 第二版、8頁 Q 11(2007年3月24日)。

注6 刑事訴訟法第316条の37。

注7 刑事訴訟法第316条の38。

注8 刑事訴訟法第292条の2。

注9 第二東京弁護士会(犯罪被害者支援委員会)、被害者参加弁護士の業務に関するハンドブック7頁(2009年3月)。

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