平和への祈り
注目を集めた伊勢志摩サミットは、多くの成果を残して閉幕しました。
世界経済に関しては、「見通しに対する下方リスクが高まってきている」との認識のもと、新たな危機に陥ることを回避するため、経済の強靭性を強化して、適時に全ての政策対応を行うことにより現在の経済状況に対応するための努力を強化する、と宣言しています。
そのうえで、これまで日本が取り組んできた相互補完的な財政、金融、構造政策の重要な役割を再確認しています。民主党政権でほとんど手つかずだった金融面での取組みが具体的に触れられています。
過剰な生産能力や、私がインタビューで懸念を示した為替レートの過度な変動・無秩序な動きにも警鐘を鳴らしています。
「あらゆる形態の保護主義と戦う」とのコミットメントが再確認され、各TPP署名国に国内手続の完了を奨励するとともに、今年のできる限り早い時期に日EU間でEPA大筋合意に達することに向けたコミットメントが歓迎されました。
また、日本が世界各地で訴えている「質の高いインフラ投資」推進についても明記されました。
私が先日訪れた腐敗防止サミットで示された、腐敗・脱税・テロ資金供与及び資金洗浄防止のための実質的所有者情報の透明性の改善についても盛り込まれました。
さらに、国際保健・女性活躍・サイバーセキュリティー・気候変動とエネルギーについても行動指針が示され、貧困削減及び「持続可能な開発」へのアプローチにおける新時代の幕開けを力強くうたっています。
今後これを受けて、わが国における対策が、既に示されている骨太方針などと併せて早急に実施されることになるでしょう。
注目されたのは外交・安全保障の取組みについても同じです。
テロ・暴力的過激主義・難民問題の原因となる根本問題と向き合うことを明示するとともに、テロ対策や密入国・人身取引との戦いを継続します。
中東におけるジュネーブ合意に基くシリアの政権移行を呼びかけ、イラクの改革と国民和解、イランの地域における建設的な役割を呼びかけます。
北朝鮮による核実験と弾道ミサイル技術を用いた発射を非難するとともに安保理決議や六者会合共同声明の順守を求め、併せて拉致問題を含む国際社会の懸念に直ちに対応するよう強く求めます。
ロシアにはミンスク合意の完全な履行を求め、ウクライナの改革を支持しています。
そして海洋安全保障に関し、国際法に基づく主張、力や威圧を用いないことなどの重要性を再確認し、東シナ海・南シナ海の状況の懸念を示すとともに「海洋安全保障に関するG7外相声明」を支持しています。
私は今回、東京に留守番となりましたが、ここまで成果をまとめることに努力された関係の皆様に心から敬意を表する次第です。
そして圧巻だったのは、その直後、被爆地広島を訪れたオバマ大統領の演説でした。
「国際社会は国際機関や国際条約を成立させ、戦争を回避するとともに、核兵器を制限し、減らし、究極的には、廃絶させることを追求してきました。とはいえ、国家間のあらゆる対立、テロ、腐敗、残虐、迫害といった、世界各地で今も見られる出来事が、私たちの任務に終わりがないことを示しています。私たちは、人間が悪を行う可能性を完全に消し去ることはできません。
だからこそ、国家と、それらの間で結ぶ同盟は、自分たちを守る術を持たなければならないのです。
しかし、わが国アメリカのように、核兵器を自ら持つ国は、恐怖の論理から脱する勇気を持ち、核兵器のない世界を追求しなければなりません。私が生きているうちに、この目標を達成することはできないかもしれませんが、破滅から世界を遠ざける努力を続けなければなりません。」
「広島と長崎を核戦争の始まりとして記憶するのではなく、私たち自身の道徳的な目覚めにしなければならないのです。」
道は遠いですが私自身も平和を祈り、実践に向けて取り組んでいく決意です。