徴税と国債発行の本当の役割
日本国は消費税の増税や緊縮財政によって長期のデフレ状態に沈み国力を衰退させ続けています。
上図の出典: デフレ不況から完全に脱却し、日本経済を成長路線に乗せると同時に、財政再建を果たすために必要な財政政策に関する提言〈Ver.2〉(概要)
~思い切った財政出動を~ 日本の未来を考える勉強会
消費税の増税や緊縮財政を日本政府が行ない続け国民も議員も過半数がそれらをあきらめと共に消極的に支持している原因は、貨幣とは何かという概念の誤解と、徴税と国債発行の本当の役割についての誤解が国民と議員にあることだと思います。
貨幣が金貨や銀貨であった頃には貨幣は金や銀の物質としての機能を基礎として、取引の仲介機能や富の蓄積機能および納税機能を持った存在でした。しかし、兌換制度が廃止された上に銀行口座がコンピュータで管理されて銀行口座間の金銭の授受を用いて取引が行われている現在においては貨幣とは価値受領権を示す情報であると考えます。貨幣が価値受領権を示す情報なので、取引において貨幣と交換に価値ある物品やサービスを得ています。取引において価値ある物品やサービスを提供して対価として貨幣を得る側も、貨幣は価値受領権を示す情報なので貨幣を受け取った自分も貨幣を用いて価値ある物品やサービスを受領できることを期待し信用しています。
日本国においては貨幣には硬貨と紙幣と銀行預金があります。硬貨は日本政府が発行し、紙幣は日本銀行が発行し、銀行預金は民間銀行および日本銀行が発行しています。政府の通貨発行権を用いて硬貨と紙幣は無から発生させています。
銀行預金は預金者が硬貨や紙幣を銀行に預けることで発生しますが、借用書と引換えに借用者の銀行口座に銀行が金額を書き込むことによっても発生させることができます。借用書と引換えに銀行が借用者の銀行口座に金額を書き込む際に銀行は預金者から預かった預金の一部を又貸ししているのではありません。単に銀行が借用者の銀行口座に金額を書き込んでいるだけです。銀行は借用書を受け取ると無から貨幣である銀行預金を発生させることができるのです。日本政府は国債という借用書を発行して、日本政府の日銀当座預金口座に金額を日本銀行から書き込んでもらっています。
日本国政府が消費税増税と緊縮財政を行ない続けている原因は、日本政府の借金である国債発行残高を税収によって返済しようとしている所にあります。日本政府が税収によって国債発行残高を返済しようとしている原因は、税収が日本政府を運営する財源であるべきだと考えているからです。それは、国債発行によって銀行から借りた金銭は返済しなければならないという事を前提にしています。国債が借金であり借金は元利合計を返済することが当然であると国民も議員も思っているからそうなります。
しかし、日本政府には通貨発行権があります。政府が硬貨の発行と同様に政府紙幣を発行して政府紙幣を日本銀行の当座預金口座に預金することで、政府の日銀当座預金に十分な金額を確保することが可能です。そうすれば、税収で国債発行残高を返済しようとして消費税増税や緊縮財政をする必要もありません。
政府紙幣発行によって政府の財源を確保することに違和感を持つ人々もいます。貨幣とは「債権・債務の記録」であるとして、借用書と引換えに銀行口座に金額を書き込んでもらって発生する銀行預金が貨幣の主流であると認識している人々です。このような認識の背景には簿記で言う「貸借対照表」があります。
物品やサービスの売買でも、金銭貸借でも、債務証書の売買でも、貨幣を払う側と受け取る側というように金銭取引の当事者が必ず2名います。
このような金銭取引では、「誰かの収入は誰かの支払い」、「誰かの負債は誰かの資産」という関係が成立するので、貸借対照表での記述対象と出来ます。
貸借対照表は言わば、取引の前後で貨幣の総量は変化しないという「貨幣保存則」を表現していると考えます。物理学での質量保存則とエネルギー保存則と同じです。
しかし、貨幣の創造の段階と貨幣の消滅の段階では取引の当事者がいませんので、貸借対照表では本来は記述できません。
物理学での宇宙創造のビッグバンと物質とエネルギーと時空の消滅のブラックホールの特異点のようでもあります。
通貨発行権に基づいた通貨発行は政府が無から通貨を発行するものなので、その過程は取引当事者がいないので貸借対照表では記述できません。
しかし、すべての経済行為は貸借対照表で記述されなければならないという事を信じている人は、政府による通貨発行は国債発行という金銭貸借の形態以外には存在しないというように理解したがります。硬貨発行では金銭貸借は行なわれていない事を無視してです。
その結果、国債発行という政府が銀行に借金をするという形態の通貨発行だけを通貨発行手段であるとみなして、通貨とは「債権・債務の記録」という誤解を広めてしまっているのだと思います。
国債発行という手段を通貨発行の主たる手段としている限り、MMTによって「変動相場制の国の政府が自国通貨建ての国債をいくら発行しても債務不履行にはならない」と判っていても、「国債を買ってくれる銀行がいなくなったらどうする?」とか、「国債の金利が暴騰したらどうする?」という話に惑わされる人が国民や議員の多数派であるという現状を変えることはできないと思います。なぜならば、借りた金は利子を付けて返すことは常識であるし、金銭貸借契約書にそう書いているからです。
そうなると、次の3つを国民と議員に常識として広めることが現状のデフレ状態からの脱出の対策となります。
1. 貸借対照表は通貨利用者間の取引きを記述するが、通貨発行や通貨消滅は記述できない。
2. 政府による通貨発行は硬貨発行と同じく、無から通貨を発行させる「政府紙幣発行」こそが王道である。民間銀行に国債を買ってもらって政府の日銀当座預金口座の預金額を増やすという方式での通貨発行は、銀行システムの維持のために銀行に金利収入を与えるためと、銀行による貸出金利を政府が制御するために存在しているだけであり、政府支出の財源確保のためではない。
3. 税金も政府支出の財源確保のためではなく、社会における富の平等の確保や、政策誘導のためや、インフレの抑制のためと、法定通貨の維持のためである。
通貨発行を国債発行方式で行なうのではなく、政府紙幣発行の方式または政府から日銀に対する命令(政府の日銀当座預金口座に指定金額を書き込め)で行なうべきと思います。通貨発行権を有する日本政府は財源確保のためには国債と称しながら銀行から借金をする必要はないと思います。 日本政府が政府紙幣を発行すれば無借金で財源ができます。政府紙幣を発行するとハイパーインフレになるとかの批判に対しては、超強力なインフレ抑制手段である消費税制を併用するので大丈夫と言えば良いと考えます。
上図の出典: https://www.fair-to.jp/blog/soverignmoney
すなわち、政府紙幣発行で高インフレをもたらしそうになったら、平成の御代に発明されたインフレ抑制手段である消費税を発動して消費を抑制すれば良いと思います。
ただし、消費税が効きすぎてデフレになりやすいので、
消費税率=Max(0,(インフレ率ー2%))とすべきと思います。
(補足説明1)
z=Max(x,y)という関数は、xとyの内の大きいほうの数値をzにするというものであり、最大値関数と呼びます。
(補足説明2)
財務省は結局は国債発行残高をゼロにしたいという事です。そのために、プライマリーバランス黒字化とか言っているわけです。
国民経済からすると、政府支出を十分に拡大してデフレから脱却できさえすれば、国債発行残高をゼロにしても良いし、
プライマリーバランス黒字化をしてもかまわないはずです。
国債発行残高をゼロにする事と政府支出を十分に拡大してデフレから脱却する事を両立させる方法があります。
政府紙幣の発行です。額面1兆円の政府紙幣を1200枚発行して、それを日本政府が日本銀行に当座預金すれば良いのです。
そうすれば、政府の日銀当座預金口座に1200兆円が積まれます。
その1200兆円から1100兆円で国債発行残高をゼロにするために国債の借金を全額返済します。
残りの100兆円で次年度の予算を組みます。
政府紙幣発行をするとハイパーインフレになるという批判に対しては、平成時代に発明された「消費税」を適用することで
容易にインフレ抑制できると反論します。実際、消費税によるインフレ抑制効果は素晴らしいものです。
消費税導入によって、25年ほどの長期のデフレを日本にもたらすことに成功しています。世界でもこんなに長期にデフレを継続できた国はありません。
このように、国債発行を止めて政府紙幣発行を政府の毎年の財源確保の柱とすることで、国土強靭化や介護や教育や国防や科学技術など多方面にふんだんに予算配分することが継続的にできます。