寄稿 いま、復活目指す米国産業
この春、韓国を代表するグローバル企業、サムスンは、これまで日本にあった開発部門の組織と営業部門の組織を一本に再編し、主要な機能を本社に戻すことにしたのです。何故か? サムスンの関係者に質した処、‘いまや日本でビジネス開発の拠点は必要なくなった、要はリエゾン(情報)機能だけ維持できればそれでいい’ということで、これまでの経営資源を成長するアジアに向けていく、というものの由でしたが、その心は、日本という市場が彼らには魅力的な存在ではなくなってきたということで、言うなれば彼らに見限られたと言えそうです。 企業は伸びる市場に投資し、拠点の再配置を図るのは当然のことです。では、上述、サムスンの事例にも照らし、なぜ日本に投資活動が戻ってこないのか、グローバル化経済と共に生きていこうとする日本として、改めて考え、そして行動すること、の必要性を痛感させられると言うものです。それにしても世界が工場や拠点の誘致を競う中で、日本政府はその現実に鈍感すぎるのではないのか、かつて強かった日本はどこに行ってしまったということなのか、と思いは深まるばかりです。 さて、そんな思いを巡らすなか、2012年4月3日付の英紙Financial Timesが掲載した米企業GEの国内回帰(Reshoring)を伝える記事(1)に出くわしたのです。更に時を同じくして、Harvard Business Review3月号は、ハーバード大のM. ポーター&J. リブキン両教授による論稿、つまり、グローバルな環境変化は今、米国に有利に働いてきており、‘米国内での事業立地’(Nearshoring)を戦略的に取り組むことを提唱する論稿(2)を掲載したのです。 一方、米国内での動きとして、近時、シェールガスの開発増産が進み、関係企業の活発な動きか伝えられてきていますし、更には、産業の現場におけるデジタイゼーションの進化、つまりデジタル化が急速な進化を遂げてきたことで、米産業の生業が革命的な変化を遂げつつあることが指摘されるようになってきています。つまり、片や‘シェールガス革命’、片や‘第三次産業革命’ともされる変化がいま進行していると言うものです。 こうした米国産業を巡る変化は、米国自身はもとより、グローバル経済の仕組み、グローバル競争構造の変化を必至とする処です。それだけに、かかる変化を理解すること、そしてこれが日本の企業にどのようなインパクトを齎すことになるのか、考えていく事が不可欠なこととなってきているのです。
グローバル化経済の中で生きていく日本としても、それら変化を理解し、持続可能性を軸とした成長を目指していく事が求められる処です。先に触れたように、日本企業に於いては、そうした戦略対応を始め出している企業は出てはきていますし、とりわけシェールガス開発を巡っては、商社などが調達拡大に向け権益取得に動くなど事業機会を探る動きが広がりつつあるところです。 このプロセスは同時に、日本と言う経済活動の‘場’を、より魅力あるものにしていく事を必然とする処です。それは自由で、合理的な活動を阻害しているような要素は解消されていくべきプロセスでもあるのです。具体的には、貿易自由化の遅れを取り戻していくとか、高すぎる法人税や膨らむ社会保障費の企業負担を見直していくとか、要はビジネスのしやすい環境を整えていくということに他なりません。そして、そのことで企業は新たな活動を進めることとなるでしょうし、海外資本の日本への流入も進み、また新たな雇用が期待できると言うものです。つまりは‘国を拓く’という事に尽きるとういうものです。 [ 参照資料 ]
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