安倍政治の論理、‘情報化’経済に生きる経営の論理
目 次
はじめに:「伊勢志摩サミット」をうまく利用した安倍首相 ・・・P. 2
- 世界経済の現状認識 ―安倍首相とG7首脳
- 消費増税は再延期
1.安倍政治NEXT ・・・ P. 4
(1)消費増税再延期の論理と、夏の参院選
・アベノミクス選挙、再び
・英誌 Economistが見る安倍政治
(2)‘ 一億総活躍 ’という成長政策、そこに欠けるもの
・「ニッポン一億総活躍プラン」
・企業のグローバル化深化と日本の政治
2.‘情報化’経済に生きる経営の論理 ・・・P.8
(1)GDP至上主義からの脱皮
・小林善光 三菱ケミカルホールデイングス会長
- 複素数式(z=a+bi)で考える経営
・チェコ経済学者 T.セドラチェック氏 -成長より安定
(2)情報化の進化がもたらす新たな‘豊かさ’
・実経済を映すことのないGDP
・豊かさを映す指標づくり、三つの工夫
おわりに:三党合意の‘反故’に思う ・・・P.12
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はじめに:「伊勢志摩サミット」をうまく利用した安倍晋三首相
5月26~27日、日本で行われた伊勢志摩サミット会議が終了直後(27~29日)に行われた安倍内閣に対する世論調査(日経とテレビ東京による)結果では、56%と前回(4~5月)調査より3ポイント上昇を示していました。それはサミットでの議長として安倍晋三首相の働きぶりについて62%、オバマ米大統領の広島訪問について92%が夫々「評価する」と答えており、一連の外交成果が支持率を押しあげる形となったというものでしょう。
とは言え、そのサミット会議の様相はそう安易に大成功だったとは言い難いものだったと思料するのです。最も気がかりは、伝えられた会議での討議内容と彼自身が記者会見で行った発言内容との食い違いで、基本テーマの一つ、世界経済に対する現状認識の違いでした。
(1)世界経済の現状認識 -安倍首相とG7首脳
サミット会議での安倍首相は、議長として以下の4つの資料(注)をベースに、世界経済はいまリーマン直前の危機的状況にあるとの現状認識を示すとともに、従って各国は、打てる政策を総動員し、とりわけ機動的財政出動を図り、リスクの回避を図るべしと、各国の協力を要請したのです。
しかしこの認識に対して、他首脳からは自国の事情にも照らしいろいろ異論が出たのです。
とりわけ、英・独からは財政均衡は維持され、また成長率も相応に水準を保っている現状からは 勢い‘世界経済の状況を‘危機的’と表現することには強く異論が出された由で、各メデイアは安倍首相との認識の相違を強調するものとなっていました。
確かに、安倍首相が提供した指標は新興国を巡るものが主となっていましたが、リーマン危機後の世界経済の牽引役だったことを考えれば、一定の説得力はある処でしょうが、それだけを以って、今後の世界経済が悪くなると、語るのは如何なものかと言うものです。
そして、そのギャップという点で、問題と映るのが日本自身でした。それは、これまでの世界経済に対する日本政府見解との温度差でした。つまり、サミット開始の3日前に出された政府の5月月例経済報告では冒頭「景気は、このところ弱さも見られるが、穏やかな回復基調が続いている」としていただけに整合性に欠けるというものです。そして6月17日、政府がまとめた6月の月例経済報告でも、同様「穏やかな回復基調が続いている」と、3か月連続で基調判断を据え置いていいます。