Home»連 載»法考古学と税考古学の広場»第43回 国際法務その9: 租税法その3-相続税法(前半)

第43回 国際法務その9: 租税法その3-相続税法(前半)

0
Shares
Pinterest Google+

「租税法」の「国際的側面」に焦点を当てる場合(注1)、便宜上、対内的取引(活動)と対外的取引(活動)の2種類に区別して来ました。このやり方は、相続税法(相続税と贈与税に関する法律(注2))の場合にも基本的には同じです。日本に住所のない人(外国人である場合と日本人である場合があります。)が日本に所在する財産を相続または贈与によって取得した事例を対内的取引(活動)とし、日本に住所のある人(日本人である場合と外国人である場合があります。)が外国に所在する財産を相続または贈与によって取得した事例を対外的取引(活動)とします。すると次の4つの事例(その1からその4まで)が考えられます。

4つの事例 相続または贈与によって財産を取得した人の国籍および住所 相続または贈与の対象となった財産の所在場所
事例その1:対内的取引(活動)その1 外国人で外国に住所あり。(日本に住所なし。) 日本:たとえば、 ニューヨークの住人であるアメリカ人ジャックが東京にある土地の贈与を受けた。
事例その2:対内的取引(活動)その2 日本人で外国に住所あり。(日本に住所なし。) 日本:たとえば、 ニューヨークの住人である日本人花子が東京にある土地を相続した。
事例その3:対外的取引(活動)その1 日本人で日本に住所あり。 外国:たとえば、東京の住人である日本人太郎がニューヨークにある土地の贈与を受けた。
事例その4:対外的取引(活動)その2 外国人で日本に住所あり。 外国:たとえば、東京の住人であるアメリカ人ベテイがニューヨークにある土地を相続した。

これら4つの事例は、「相続税法の国際的側面」として、すべて日本の相続税または贈与税が課される事例です。対内的取引(活動)である事例その1および事例その2の場合、相続税であれば相続税法第1条の3第3号および同法第2条第2項(注3)、贈与税であれば相続税法第1条の4第3号および同法第2条の2第2項(注4)が根拠です。対外的取引(活動)である事例その3および事例その4の場合、相続税であれば相続税法第1条の3第1号および同法第2条第1項(注5)、贈与税であれば相続税法第1条の4第1号および同法第2条の2第1項(注6)が根拠です。
ところが、対外的取引(活動)でも対内的取引(活動)でもない取引(活動)、つまり、日本に住所のない人(外国人である場合と日本人である場合があります。)が外国に所在する財産を相続または贈与によって取得した事例(外国での国内取引)、および、日本に住所のある人(日本人である場合と外国人である場合があります。)が日本に所在する財産を相続または贈与によって取得した事例(日本での国内取引)、が考えられます。つまり、次の4つ追加事例(その5からその8まで)が考えられます。

4つの追加事例 相続または贈与によって財産を取得した人の国籍および住所 相続または贈与の対象となった財産の所在場所
事例その5:外国での国内取引その1 外国人で外国に住所あり。(日本に住所なし。) 外国:たとえば、 ニューヨークの住人であるアメリカ人ジャックがニューヨークにある土地の贈与を受けた。
事例その6:外国での国内取引その2 日本人で外国に住所あり。(日本に住所なし。) 日本:たとえば、 ニューヨークの住人である日本人花子がニューヨークにある土地を相続した。
事例その7:日本での国内取引その1 日本人で日本に住所あり。 外国:たとえば、東京の住人である日本人太郎が東京にある土地の贈与を受けた。
事例その8:日本における国内取引その2 外国人で日本に住所あり。 日本:たとえば、東京の住人であるアメリカ人ベテイが東京にある土地を相続した。

これらの追加事例については、次回(第44回)で検討しましょう。

Previous post

第42回 国際法務その8: 租税法その2-法人所得に関する税法

Next post

右脳インタビュー 夏川和也