第26回 粉飾決算その4: 子会社を利用した粉飾決算
見かけを良くしようする粉飾決算は、子会社を利用して行われることが多いようです。例えば、親会社が一度は100で顧客に売却した商品が不良品だとしてその顧客から返品された場合、その同じ商品を子会社に対して改めて100で売却したとするやり方です。このような粉飾決算は、連結決算を採用することによって防止できる建前となっています。つまり、親会社と子会社の個別財務諸表を合算して連結財務諸表を作成すれば、親会社の子会社に対する売上げ100と子会社の親会社からの仕入れ100とが相殺されるからです。しかしながら現実には、いわゆる連結はずし(連結のがれ)が多く行われているようです(注1)。
逆に、見かけを悪くしようする粉飾決算も、子会社を利用して行われることが多いのです。例えば、親会社が100で顧客に売却しようとする商品をワザとまず子会社に80で売却し、子会社が顧客に対し100で売却すれば、中間マージン20が子会社に落ちることになります。このようなやり方は、この子会社が外国会社である場合には、移転価格税制上の問題となります。つまり、この外国子会社への売却価格80が「独立企業間価格」であるか否かが問題となるのです(注2)。加えて、もし、この外国子会社がいわゆるタックス・ヘイブンに所在する場合には、タックス・ヘイブン税制(外国子会社合算税制)上の問題にもなります。つまり、このタックス・ヘイブン子会社の中間マージン20が「無税または著しく低率の課税(25%以下)の対象」となるのであれば、このタックス・ヘイブン子会社の留保所得(親会社に配当しないで自社内に溜め込んだ利益)を親会社の所得に合算することになります(注3)。
脚注
注1 井端和男、最近の粉飾-その実態と発見法-第2版、税務経理協会(平成20年8月)63頁以下に「サンビシ株式会社」の例が次のように述べられています。「サンビシでは、子会社も関連会社もないことになっていて、連結財務諸表は公表されていない。[サンビシが全くの第三者としての買主だとしていた甲会社は]形式的には子会社でも関連会社でもないが、サンビシの社長が甲会社の社長をも兼任しているし、サンビシは資金繰りを通じて甲会社を完全に支配していたと思われるので、実質的にはサンビシの連結対象子会社であり、甲会社を連結対象にした連結財務諸表を作成し、開示していなければならないと考えられる。」
注2 租税特別措置法第66条の4。
注3 租税特別措置法第66条の6。