右脳インタビュー 滝澤三郎 国連UNHCR協会理事長・元UNHCR駐日代表 東洋英和女学院大学客員教授
片岡: 今月のインタビューは滝澤三郎さんです。本日は、難民・移民問題についてお伺いしたいと思います。
滝澤: 世界の難民・移民問題は、戦後最大の人道危機にあります。現在、難民または国内避難民は6000万人を超え、昨年だけでも欧州を目指して110万人もの難民・移民が地中海を渡り、その途中で3800人が命を落としました。サハラ砂漠でも、密航業者に置き去りにされた移民30人が死亡するなど、多くの死亡事件があります。
難民を大きく分けると、北朝鮮のような独裁国家の「強すぎる政府」の弾圧・迫害による「政治亡命者」と、シリアやイラクのように「弱すぎる政府」のために国家が壊れて内戦状態にある国から逃れてくる「紛争難民」があります。世界の多くの国は色々な問題を抱えていて、安全と平和がない方が常態といっていいのです。また貧困を逃れて移動する経済移民の問題もあります。彼らの多くはアフリカ出身で、何カ月もかけて、サハラ砂漠を越え、地中海を渡ってヨーロッパに行きます。その背景には、広がる経済格差があります。1%の人が残りの99%の人より多くを所有するという地球規模の「不公平な富の分布」があり、「富が移動しなければ人が移動する」のです。更に世界的人口動向の問題もあります。途上国、特にアフリカやアジアでは人口が増えて仕事も足りなくなっていて、若者は失業率が30%、40%と大変です。他方、豊かな北の国は日本を含めて、人口減、労働力不足となっています。当然、貧しい南側の国から、豊かな北側の国への「人の移動圧力」が生まれ、経済移民が難民と一緒に北側の豊かな国に流入する。難民問題と移民問題が重なり問題がどんどん拡大しています…。
参考: ブリーフィング資料