日本を衰退させ続けている貨幣と財政に関する誤解
日本は貨幣と財政に関するいくつかの誤解が原因で行なわれている増税と緊縮財政によって、衰退し続けています。
上図の出典: 99%のための経済政策フォーラム 第4回学習会(2019/5/20)まとめ資料 「消費税減税・格差是正の税制改革と暮らし安心社会への財政投資で 日本経済を再生せよ!」 藤井聡(京都大学大学院教授)
日本の国民、政治家、経済学者、官僚には貨幣と財政についての次の誤解があると思います。
誤解1:貨幣は政府が借金して発行しなければならない。
誤解2:政府支出では、税収を主たる財源にしなければならない。
誤解3:貨幣は有限であり、質量保存則と同じく貨幣量保存則に支配されているので、誰かの資産は誰かの負債であるし、誰かの赤字は誰かの黒字となる。
●誤解1について述べます。
政府の税収は最近は50兆円程度で、政府の一般会計支出は100兆円程度であり、税収不足分は国債発行で得た約50兆円をあてています。しかし、政府には通貨発行権があります。
通貨発行権を持っている政府がなぜ民間銀行や日本銀行からの借金である国債発行をして財源を作る必要があるのでしょうか? 借金なので利子を付けて返済しなければならなくなります。通貨発行権を用いて通貨を創造して、それを財源にして政府支出をすれば、利子も元金も返済する必要は無いし返済のためにプライマリーバランス黒字化などと言っては、緊縮財政と増税を繰り返して日本経済を衰退させ国民を貧乏にして、国力を衰退させることもありません。
政府が通貨発行権を持っているのに、わざわざ銀行から借金をして財源を得ている理由として良く言われている事は、「政府が自分で通貨を発行すると、通貨を発行しすぎてハイパーインフレを発生させて経済を破壊するから、中央銀行に通貨発行は任せなければならない。」というものです。しかし、これは誤解かもしれませんし陰謀によって国民も政治家も信じ込まされているだけかもしれません。
現在の通貨法のもとで、負債を生じさせない政府貨幣を発行する手段として考えられる方策は、毎年の天皇誕生日の記念に半導体微細加工技術を駆使して、シリコンウェハー上に微細な1万円硬貨を10000×10000個形成した、1兆円ウェハーを100枚程度発行して、日銀に預金するというものです。これなら、政令だけで対応できます。すなわち、財務省の意向とは無関係に、内閣総理大臣の命令で実現できます。
通貨法: https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=362AC0000000042
●誤解2について述べます。
日本政府は税収を主たる財源であると誤解して、PB黒字化を目標としています。しかし、税収は政府が通貨発行をして得た通貨を政府支出によって民間に支払う事で民間経済に通貨が行きわたった後に初めて得ることができるものです。すなわち、政府支出は本来は通貨発行によって得た通貨で行なう事が王道なのです。税収を政府支出の財源とする事は、電気自動車において回生ブレーキによって得た電力を走行用の主たる電力であると誤解していて、主バッテリーに外部から給電して電力を蓄積させて走行に使う事を拒否しているようなものです。そんな事をしていると、車がすぐに止まってしまいます。すなわち、税は回生ブレーキのようなものであり、貨幣循環スピードと貨幣量を減らしながら、財源確保します。国債発行は外部から電源供給して車載の主たるリチウムイオン電池を充電するようなものです。
上図の出典: https://car-moby.jp/53942
●誤解3について述べます。
貸借対照表で貸方と借方をバランスさせる形で通貨発行しなければならないので、政府は国債という借金を発生させながら通貨を発行する必要があるという人もいます。
しかし、貸借対照表はご存知のように、
資産 = (負債+純資産)の恒等式を表の形式で記述したものです。
よって、この恒等式の両辺の微分をとると、
資産増分=(負債増分+純資産増分)となります。
政府の通貨発行を国債でA兆円すると、資産増分=A兆円,負債増分=A兆円,純資産増分=0兆円となります。資産増分と負債増分がバランスします。
政府の通貨発行を政府が日銀に対して「政府の日銀当座預金口座にA兆円を書き込め」との命令を出す手段又は「1兆円ウェハーを100枚程度発行」のどちらかによって行なうと、資産増分=A兆円,負債増分=0,純資産増分=A兆円となります。資産増分と純資産増分がバランスします。
すなわち、負債を増やさずに貸借対照表をバランスさせた形で資産を増やして、通貨発行できるのです。
☆ 日本衰退の原因は、政府が通貨発行権を有しているのにもかかわらず、わざわざ国債発行をして銀行から借金をし、借金で財政破綻すると主張しては増税や緊縮財政を行なっていることです。国債発行をしなくても単に政府の日銀当座預金口座に政府が支出したい金額を書き込めば良いだけであり、増税も緊縮財政も不要です。税収は貧富の格差是正と政策誘導のために行なえばよく、財源としては補助的な役割しかありません。国民も政治家も誤解1~誤解3から脱却すれば日本国はデフレによる国家衰退から抜け出せると思います。