Home»フォーラム»今後10年のリスク

今後10年のリスク

0
Shares
Pinterest Google+

「10年」という単位で考えた場合、いささか宗教的になりますが、人類が抱える最大の危機は「平和」で、そこには三つの視点があります。

 

  • 人間一人ひとりの心の平和

例えば米国では、今、マンハッタンの住人の4人に一人は「ドラッグ・アディクト」(医者が合法的に処方する鎮痛薬、精神安定剤と非合法ドラッグの両方を含む依存者)といわれるほど、人の心が病んでいて、それがまた犯罪やテロにも繋がっています。医師の管理のもと合法的な薬を飲んでいる人たちでも、時間の経過とともにどうしてもより強いものを使うようになり、薬代も高くなっていきます。そのうち「こんな高い薬を使うよりも裏町でヘロインを買った方が安い」という人たちも出てきます。このような常習者はつくればつくるほど当然、医師も麻薬ディーラーも儲かり、またヘロインはテロや犯罪組織の資金源となっています。医師によって合法的に「ドラッグ・アディクト」が大量に作り出す仕組みともいえ、ある意味で、こうした「ドラッグ・アディクト」や「ボトックス」(美容目的。これも一度始めると常習)といったものは、医者が「大金持ちになる手段」として使われているのが現状です。製薬会社も患者の犠牲、社会の犠牲のうえで丸儲けです。米国の負の一面ですが、世の強欲と、余りにも個々人に対する社会的プレッシャーが強い社会では、人の心が病み、社会全体を崩壊に導いて行きます。

 

  • 人間社会の平和

この中に1)戦争と、2)格差拡大という不平等の拡大があります。

世界には「戦争をしないための努力」をする指導者よりも「戦争に参加しようとする力」の方が圧倒的に多く、政治家の多くが武器商人の傀儡になっています。日本の「防衛村」も同じです。そして、更に心配なことはAIやロボットの進歩がまずは軍事目的、そして金融に使われ、「効率」だけが重んじられ、人間性が排除され、人間がこれら「完璧な無神論者の機械」に盲従、服従させらられるようになることす。無人爆撃機、無人戦車、ロボット兵団、宇宙船攻撃AI付きミサイルの前に、生身の人間は自分たちを護る手段を失います。

人間の心はあまりに無防備であり、こうした急激な科学の進歩や変化になかなかついて行けていません。科学の発展をコントロールする叡智をもたないのです。軍事ドローンや、ロボット、AIの発達を見ていると、この危機感は非常に強いものとなります。

そしてもう一点。情報産業が発達し、人々の間のコミュニケーションと相互理解が進んでいるようで、実際には「無関心のグローバル化」(教皇フランシスの表現)が急速に進んでいます。これらの「事実」が一層の酷い戦争の拡大の危機を占っています。

次に格差の拡大ですが、お金持ちは、自分のお金を使わずに一番低い利子率でお金を借り、レバレッジを利かして投機し、時に高い利回りを得ることができます。(多くの失敗もしますが)しかも、投機をして「僕の得は僕のもの、僕の損は皆の損」とします。これは有限責任会社、ノンリコースの借り入れ、金融機関の過保護などの仕組みがもたらすものです。一方、99%の庶民は貯金があっても、極端な金融緩和で殆ど0%のような金利しかつかず、貯金を取り崩さないと生きていけません。勿論、借金して投機することなどできない。将来に対する不安は募り、消費拡大など起こりません。

ゼロ金利、マイナス金利に反対なのは、前述の通り、借入金で投棄し儲ける人はどんどん儲かるなかで、中産階級がどんどん崩壊し、貧困層がどんどん増えていくからです。加えて投機の損は庶民に被せられる。

また例えば医薬品の開発を自社開発でなく借金してのM&Aに頼ることにようなことは、薬価を高騰させます。彼らが実際に開発にかかったコストではなく、高い買収コストを回収しようとするからです。しかし、世の中の80%の人は1日10ドル以下で暮らしていて、いくら良い薬が生み出されても、価格が高くては世の中の2割の人たちしか使えず、残りの8割の人にとっては、存在しないのと同じなのです。

 

  • 人間と地球の間の平和

これは「パリ協定」で一歩前進ですが、それでも年間4万種の絶滅種が出ているような状況を変えるものではありません。人間の強欲の前に、地球は自分を護る手段をもっていないのです。また私はコントロールできない強欲と科学の進歩が、人間が人類を絶滅させることにならないかと懸念しております。

 

Previous post

監査等委員会設置会社の脆弱性  ~コーポレートガバナンス・コードの形骸化につながるおそれ~

Next post

無能であることは罪に問われない